少子高齢対策は高齢者の健康を向上させること

日本の少子高齢社会への警鐘を鳴らし、「少子高齢に歯止めをかける」と発言した地方創生大臣を批判した研究者の講演に期待を持って参加しました。日本メディカルダイエット支援機構は活動拠点を東京と岡山の二か所にして、東京と地方の両面からのアプローチで、メディカルダイエットを高齢社会対策に役立てようとして活動を進めてきました。その参考になるのではという期待を抱いていました。その対策として10の考えがあるというのでワクワクもしていましたが、一つ目の対策を聞いただけで、この後も聞くべきかと思ってしまいました。
その対策というのは「高齢者を減らす」というテーマで、“まさか、この話だけはないだろう”と思っていた“まさか”の話をされて、その後に“ひょっとしたら別の話があるのでは”と淡い期待も持っていたのですが、それもないまま次の話題に移ってしまいました。
示された対策は、「高齢者の年齢を引き上げる」ということでした。高齢者は現在、65歳以上となっています。それを75歳以上にするというのです。65歳を75歳にというのは、日本老年学会と日本老年医学会が提言していることで、今の高齢者は心身ともに10歳は若くなっているので、高齢者を75歳からにして、65〜74歳を准高齢者にしようという内容です。
10歳ほど身体が若くなっているのは認めるところですが、年齢を重ねるほど増えていく認知症患者と軽度認知障害の該当者は年齢に比例して増えていく一方です。身体は若くなっていても認知機能が低下したのでは、若年性認知症が増えたのと同じ、高齢者が増えたのと同じになってしまいます。
軽度認知障害で患者と書かなかったのは、軽度認知障害と診断されてもピンポイントの治療薬がなくて、バランスの取れた栄養、適度な運動、充分な休養という当たり前の指導しかされないので、患者と呼ぶのに抵抗を感じるからです。
高齢者の年齢を上げると高齢化率は改善できます。しかし、今の75歳が昔の65歳と同じ状態なのかというと、同じとは言いにくい状況です。その状況の一つとしてあげたいのは、生涯医療費のデータです。一生涯に使う医療費のうち半分が70歳以降で使われています。70歳前の70年間と、男性の場合は後の10年間で同じだけの医療費が使われているということです。
高齢者を65歳から75歳に変えたことで、生涯医療費の半分を使う時期が75歳に5歳だけでも上がったというなら75歳になるまで病気があったとしても“元気”ということが言えるかもしれません。高齢者のイメージというと、身体が弱い、病気が多い、医療費がかかるという現状から考えると、医療費のピークにズレてくれないと、なかなか認めること、納得することはできないところです。
生涯医療費のデータを見ていて気づくことは、60歳くらいから大きく上昇する曲線を少しでも低くできないかということです。高齢になってから、病気になってから対応するのではなく、高齢になる前に、病気になる前に対応して、悪化しないように少しでも医療費がかからないように、そして改善ができる状態で治療を始めるようにすることが求められるということです。
高齢者の基準の年齢を上げるのではなくて、65歳を超えたら高齢者であることを意識して、早めに検査を受ける、早めに改善に取り組む、早めに治療する、そして早めに治して通院しなくてもよいようにするということが理想であると考えます。その考えからすると、高齢者の年齢を上げるなら、別の対応もしなければいけないのではないか、ということが言いたいのです。
そのようなことを指導して日本メディカルダイエット支援機構の仕事が終わるわけではなく、実践してナンボ、結果を出してナンボの世界です。高齢者とされる年齢になっても、高齢者の身体の状態ではなくて、年よりも若々しくいられるように運動指導、栄養指導などを行い、指導の意味を充分に理解して継続してもらえるように教育にも力を入れているところです。