エネルギー代謝の六大栄養素

三大栄養素といえば糖質、脂質、たんぱく質です。この3種類の栄養素はエネルギー源で、これ以外にエネルギーとなるものはありません。エネルギー源といっても、たんぱく質は身体を構成する成分で、ホルモンや酵素の材料でもあり、さまざまな働きがあることから、たんぱく質がエネルギーとして使われるのはよいことではありません。先に糖質と脂質がエネルギーとなり、それで不足しているときにエネルギーとなります。もしも糖質、脂質、たんぱく質ともに食事から不足していた場合には、身体のタンパク質が分解されてエネルギーとして使われてしまいます。
三大栄養素に続くのがビタミン、ミネラル、食物繊維で、これらを合わせて六大栄養素と呼ばれています。このうち食物繊維を除いて、代わりにヒトケミカルを加えようというのがエネルギー代謝の面で考えた分類で、私たちも、それを採用するのがメディカルダイエットを進めるのによいのではないかと考えています。
ヒトケミカルという言葉は、今では随分と知られるようになってきましたが、正式の科学用語ではなく、栄養学の教科書にもまだ掲載されていません。ケミカル(Chemical)は化学物質を指す言葉で、ヒトは人間を指します。つまり、人間の身体の中で使われている化学物質で、細胞の中の生化学反応を起こしている成分です。代謝のためには、三大エネルギー源もビタミン、ミネラルも使われています。五大栄養素に数えられているものを除いて、残ったものを特に他のヒトケミカルとは異なるということを示すために三大ヒトケミカルと呼んでいます。それに該当するのはα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。
この名前を聞いて、サプリメントを思い浮かべる人も多いかと思います。代謝を促進する成分であることから多くのサプリメントに使われていますが、元々は体内で合成される成分です。というのは、この3種類の成分がなければ代謝が起こらないからで、だから合成されているのです。合成されるのなら、“わざわざ身体の外から摂る必要がないのでは”と思われがちですが、体内でのピークは20歳代で、最も多く合成されているのは20歳です。それを過ぎると減少していきます。
減少していっても大きく不足しなければ影響が出ないとも思われがちですが、女性が皮膚の老化を初めて感じるのは25歳前後です。代謝が低下して、同じ食事量、同じ運動量であっても太りやすくなるのは30歳を過ぎたころです。この変化に影響を与えているのが三大ヒトケミカルの減少です。
三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は体外から摂るものとしては、以前は医薬品成分だけが認められていましたが、2001年から2004年にかけて食品の成分としても認められ、サプリメントにも使われるようになりました。
三大ヒトケミカルを六大栄養素にラインナップさせようとするのは、エネルギー代謝に欠かせない成分で、高齢社会の今は不足した状態で過ごしている人が多いからです。α‐リポ酸は糖質のブドウ糖を細胞のミトコンドリアに取り込むことと、ミトコンドリアの中で燃焼させるために作用している成分です。L‐カルニチンは脂肪酸をミトコンドリアに取り込むために必要となる成分です。そして、コエンザイムQ10は細胞内での燃焼に必要となる補酵素です。この補酵素があることで、生化学反応を起こすことができるのです。
三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質と、三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10があればよいわけではなく、糖質はブドウ糖になり、ミトコンドリアの中でアセチルCoAとなって燃焼回路(TCA回路)に回ります。脂質は脂肪酸になり、たんぱく質はアミノ酸となって、やはりアセチルCoAとなります。この変化の段階で、すべてのビタミンB群が必要になります。また、燃焼回路にもビタミンB群が必要になり、さらに鉄などのミネラルも必要になります。つまり、ビタミン、ミネラル、ヒトケミカルがあって初めてエネルギー代謝が起こっているということです。だから、六大栄養素に加えようとしているのです。