代謝に必要な成分を摂れば代謝は高まるのか

「代謝の促進に必要な成分だから、それを摂れば代謝が促進される」というのは簡単かつわかりやすいロジックです。このロジックはテレビ番組でも商品のコマーシャル映像でもよく使われていますが、すべてに成り立つわけではありません。代謝に必要な成分であっても、それが充分に足りているヒトなら、サプリメントで補っても余分なものとなって、効果を期待しても無理というものです。
この例としてよくあげられるのはL‐カルニチンです。肉に多く含まれる成分で、脂肪燃焼に効果を発揮することから、肉を多く食べる民族では体内に多く蓄積されています。だから、サプリメントで摂っても効果が出にくくなっています。ところが、日本人のように肉食が歴史的に少なくて、蓄積量が少ないとサプリメントで補ったときの効果が出やすくなっています。
L‐カルニチンが2002年に食薬区分の変更によって医薬品だけでなく、食品としても使えるようになったときには、L‐カルニチンはサプリメントとして効果がないという海外のデータが紹介されたものです。しかし、日本人を対象とした試験では有効性が認められたという経緯があります。
L‐カルニチンは三大ヒトケミカルの一つですが、他のα‐リポ酸、コエンザイムQ10も若いときには充分な量が体内で合成され、充分に蓄積されています。“若いとき”というのは、いつかということですが、ピークは20歳です。しかし、身体に強い負荷をかけるようなことがなければ、20歳代(20〜29歳)で不足することはないはずです。ところが、年齢を重ねていくと減っていく一方なので、サプリメントで補うと効果が出やすくなります。
このことを見ると、代謝に必要なL‐カルニチンを摂ると細胞のミトコンドリアに取り込まれる脂肪酸が増えて、代謝が高まるということがいえます。
三大ヒトケミカル以外でも、酵素は広義のヒトケミカルの一つです。酵素不足が代謝低下の原因と決めつけるようなコマーシャルをよく見かけますが、酵素が不足している人に、酵素が含まれる飲料などを摂って、それで代謝が高まるのかというと、そうとは限りません。酵素は、酵素だけで身体の中で化学反応を起こすわけではなくて、補酵素が必要です。酵素に補酵素が結びつくことによって酵素本来の働きができるようになります。補酵素の多くはビタミンとミネラルです。ビタミンもミネラルも数多くの種類があり、これらの栄養素が補われていないと酵素が充分に働くことができなくなるということです。
そもそも酵素といっても飲料などの酵素は消化酵素です。酵素は細胞の中でしか働かない代謝酵素と、細胞から外に分泌される消化酵素があります。消化酵素が代謝酵素になることはありません。しかし、1日に肝臓で合成される酵素の量はほぼ決まっていて、消化酵素が多く使われると代謝酵素が減ることになります。そこで消化酵素を摂ることで代謝酵素が増えると、あたかも代謝酵素を摂ったのと同じような結果となるわけです。
L‐カルニチンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。