糖質制限は糖質減少とたんぱく質増加でよいのか

「糖質制限をすると脳のエネルギー源となるブドウ糖が不足するのでよくない」と批判する人がいます。ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源で、脳が消費するエネルギー量は全エネルギー量の約20%であるので、少なくとも1日の摂取する三大エネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)のうち20%はブドウ糖が含まれる糖質を摂らなければならないということが理由として掲げられています。
この批判に対して、「ブドウ糖が不足したときには糖新生が起こるので大丈夫だ」というのが糖質制限を推奨する人が理由として掲げていることです。
糖質制限というのは、ブドウ糖が不足したときにアミノ酸を材料としてブドウ糖を作り出す仕組みで、分解された体内のタンパク質がアミノ酸に分解され、これが肝臓に運ばれて糖新生が起こります。だから、ブドウ糖は不足することがないということで、ブドウ糖の摂取量を減らすときには、たんぱく質を多く摂ることが重要ということも掲げられています。
「しかし……」と私たちが考えるのは、「たんぱく質が含まれる食品を摂るだけでよいのか」ということです。アミノ酸のうち体内で合成されない必須アミノ酸が豊富に含まれる食品は肉、魚、卵、牛乳・乳製品、大豆・大豆製品で、これらの食品を食べていれば大丈夫と言われていますが、糖新生のために使われるのは身体を構成するタンパク質です。必須アミノ酸を多く摂っていれば、タンパク質が分解されても、それが補われるので身体を構成するタンパク質が大きく減ることはないとも言われますが、タンパク質が分解されるのは間違いないことです。
ここで用語解説をしておくと、食品に含まれるのは“たんぱく質”で、身体の中で合成・蓄積されたものは“タンパク質”と使い分けています。
身体を構成するタンパク質の中でも特に多くの量が蓄積されているのは筋肉で、中でも大きな力を発揮する骨格筋の中に多くが蓄積されています。筋肉をつけるには運動をすることが重要で、だから糖質制限をして、たんぱく質を摂るときには筋肉運動をすることも必要だということがわかります。
アミノ酸がブドウ糖に変化するときにはエネルギーが必要になります。ブドウ糖1分子を新生するためにはエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が6分子必要になります。ブドウ糖1分子が細胞のミトコンドリアの中で代謝されるときにはATPが38分子作られます。せっかくのATPが減ってしまうので、その分のATPを作り出すためにミトコンドリアの中でのエネルギー産生を盛んにしなければなりません。
そのためには筋肉運動をすることですが、筋肉運動をしてエネルギーを作り出すときには、エネルギー源のブドウ糖や脂肪酸が必要になるので、このエネルギー源が減りすぎないように、糖質制限によってブドウ糖が不足するときには脂肪が摂れるように肉や魚を食べることが必要になってくるわけです。肉はダイエットの大敵だと思っている人がいますが、そうではないことを知っておいてほしいのです。