病気のせいか副作用なのかわかりにくい症状がある

前回の副作用とサプリメントの使用についての話題に反応して、すぐにメディア関係者から連絡と質問がありました。前回は医薬品の副作用なのに、疾患による新たな症状と勘違いして、医薬品の数が増やされ、それが副作用を強くするということは薬学関係者なら当然の出来事という認識があることから、今になっても特に反応はありません。
質問のポイントは、「勘違いされる症状の原因となっている医薬品の種類は何か」ということで、また医療批判的な記事のネタに使われるかもと考えもしましたが、どこかで調べればすぐわかることなので、当方の知識の範囲で応えておきました。
よくある症状としては“ふらつき”で、それで終わらずに転倒すると、これは脳の病気ではないかと疑われるのですが、このような副作用があるのは中枢性などの降圧剤、抗不安薬で、睡眠薬も同じようなことが起こります。“記憶障害”まで起こると、さらに脳の異常が疑われるところですが、この症状についても中枢性などの降圧剤、抗不安薬、睡眠薬の副作用としてみられることです。高齢者によくみられる“抑うつ”は中枢性降圧剤、抗ヒスタミン薬、抗精神薬の副作用としても現れます。
こういった症状では、大きな病気が隠れている心配もあることから、医師も慎重に診断をしてくれる(と信じたい)のですが、いろいろな原因で起こる“食欲低下”となると、医薬品の副作用が疑われずに、すぐに胃腸に関係する医薬品が処方されるのもよくある話です。食欲低下が副作用として現れやすいのは非ステロイド性抗炎症薬、緩下剤、抗不安薬です。もっと起こりやすいのは“便秘”で、これは睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬の副作用となっています。
医薬品を使って、そのために起こった副作用を新たな疾患として、さらに医薬品を出して、種類が増えたことでもっと副作用が強くなったり、別の副作用が起こったり……ということを意図してやっている医師はいない(と信じたい)ので、副作用も知識を持って使ってもらえればと医薬品とサプリメントの相互作用に詳しい薬学博士に話をしたところ、「副作用について詳しい医者は少ない」との話を返してくれました。医師の中でも副作用が起こりやすい高齢者を対象とした老年病学、老齢医学、未病医学に携わっている専門家なら、副作用には詳しいと言います。
しかし、医薬品の情報を製薬会社の医薬品営業マン(MR=メディカル・レプリゼンタティブ)に頼っているクリニックなどの医師になると、「効能効果の説明はよく聞いても副作用までは」ということも珍しくはないことです。医師の中には、MRが販売する医薬品のよさばかりを強調するあまり、副作用の情報を伝えたがらないのが原因、と言う方もいますが、それがわかっているなら聞けばよいのにと思うこともあります。
薬剤師がいる病院なら、医師と薬剤師の連携で副作用情報が得られても、個人の勉強の成果に頼るしかないというのも、また珍しくはない話です。
受診するときに「先生は医薬品の副作用に詳しいですか」と聞くことが憚られる現状では、患者や家族が副作用情報をネット検索して、少なくとも自分や家族が使っている医薬品の副作用くらいは知っておかなければならないということです。