健康食品の情報に科学的根拠はあるのか

健康食品に批判的な記事を載せている雑誌の編集者から、「公的機関の健康食品情報は裏付けがないんですか」という質問がありました。その質問を受けたときに、“あの本を見たのか”と思って聞いてみたら、案の定の返事でした。その本というのは、医学博士が自分の闘病体験から健康術を書いたもので、その中にわずかなページですが、サプリメントの項目があり、そこに「健康食品に科学的根拠はほとんどない」と書かれていました。“ほとんど”というのを忘れたのか、科学的根拠がないと書かれていたものと思ってしまったようです。
そんなことよりも問題は、ほとんどであろうと全部であろうと科学的根拠がないという意見ですが、その意見を述べている先生が以前に公的な栄養研究機関の理事長を務めていたことがあり、その機関が今に到るまでずっと健康食品の有効性と安全性のデータベースとなる情報を公式サイトに載せ続けています。
編集者は、「前に理事長だった人が健康食品に科学的根拠がないと断言しているということは、公的な情報と信じて参考データにしていたのは間違いだったのか」と心配になって質問したとのことでした。
それに対する返答ですが、その先生の断言には疑問もあって、科学的根拠がある健康食品は数多くあります。特定保健用食品も機能性表示食品も科学的根拠がなければ表示できないので、その制度を否定するような断言です。特定保健用食品や機能性表示食品でなくても、科学的根拠に裏付けられたものを私たちは多く確認しています。
編集者が情報源としたのは、健康食品の商品についてではなく、使われている素材についての評価情報です。素材についての科学的根拠はあるものの、それが含まれた健康食品では科学的試験をしていないものが多いので、それをもって科学的根拠がないと言っているなら、これは理解できないことではありません。
ここでは情報源のことを信用しているような書き方をしていますが、本心から信じてるのかと聞かれれば、そうではないと返答します。その情報源の基となっているのは、アメリカのナチュラルメディシン・データベースで、健康食品の素材に関する世界中のデータが集められ、専門家が分析をした結果の有効性情報と飲み合わせの安全性情報が載っています。そのナチュラルメディシン・データベースの日本版の権利を出版社が得てから、前出の公的機関では最新の更新情報を出すことができなくなり、更新されていない過去のデータが基本となって載ったままとなっています。
健康に関わる情報は日々変化し、進歩しているので、古い情報は間違いともなりかねません。編集者には、日本版のナチュラルメディシン・データベースである『健康食品・サプリメントのすべて』を見るように、まずはすすめました。この中の有効性情報は、各成分について6段階で評価(医薬品レベルの有効性〜まったく効果なしまで)されています。そのような情報は、このデータベースだけであることも伝えました。