053 口中調味が健康づくりの基本

「口中調味」という言葉があります。この食べ方ができることによって日本人は長生きになったという考えがあります。一般的な意味としては、口の中で食べ物を噛んで混ぜ合わせることとで味を変化させることを指しています。食べ物には一つひとつに味があっても、それが口の中で混ざると違う味になるので、複数の食品を使った料理は口の中に入れた量によって違う味を感じていることになります。
私たちが考える「口中調味」は、その意味も含んでいますが、一歩進んで「体調に合わせた味わい」を指しています。初めの口に入れるのは、ご飯、おかず、汁物と人それぞれではあるものの、おかずの味を濃く感じた場合にはご飯を口に入れ、薄く感じた場合には汁物を口に入れます。最終的には食卓のものをすべて食べるにしても、こうやって味覚を鍛えながら味わって食べることで、その時々の体調に合った食べ方ができるようになります。
疲れているときや病気のときには薄味を求めるようになり、元気がほしいときには濃い味という感じですが、年齢を重ねていくと、だんだんと薄味傾向になっていって、肉よりも魚を好むようになっていきます。これは日本人の特徴だと言われています。
欧米人やアジア大陸の人たちは青年期に食べた味わいが一生涯続き、食べるものも料理も大きくは変わりません。青年期と変わらない食事では高齢者が塩分や脂肪を多く摂ることになり、これが生活習慣病を増やす原因となっています。それに対して日本人は口中調味の食べ方を続けてきたおかげで、だんだんと脂肪が少ない食品を選び、塩分が少ない料理を好むようになります。これが健康づくりの基本となっているのです。
ちなみに生活習慣病は食習慣、運動習慣、生活習慣(休養、飲酒、喫煙など)の生活習慣が発症や進行に関与している病気のことで、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)、がんなどがあげられます。以前は成人に多くなることから成人病と呼ばれていました。しかし、子供でも起こるようになったことから生活習慣病の名称となりました。この名称は、生活習慣病は本人の生活習慣に関係しているので、本人のせいだとする考えにもつながっています。