コレステロールは肝臓で合成されるわけですが、その材料となっているのはブドウ糖などの糖質です。糖質の代表的なものはブドウ糖や果糖です。ブドウ糖を多く摂取すると余分となったブドウ糖は肝臓で脂肪酸に合成されます。脂肪酸3個がグリセロール1個と結びついて中性脂肪となり、これが血液中を流れ、脂肪細胞の中に蓄積されていきます。
果糖はフルーツに多く含まれていますが、果糖が血液中で多くなると肝臓で脂肪酸に合成され、中性脂肪の量が増えていきます。血液中のブドウ糖が多くなると糖尿病だけでなく、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)になり、動脈硬化が進むことになるということです。
また、アルコールには脂肪酸合成を進める作用があり、アルコール飲料を飲むことによって脂肪酸合成が進むので、飲酒をするときには糖質や脂質の摂りすぎには注意しなければなりません。
ブドウ糖が動脈硬化の間接的な要因になることを知ると、糖質制限を考える人が増えていきます。血糖値が上昇すると膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンにはブドウ糖を細胞に取り込ませる働きがあるからですが、それと同時に肝臓での脂肪酸合成を進める作用があり、さらに中性脂肪が脂肪細胞の中に取り込まれるのを促進させる作用もあります。インスリンの分泌は自律神経の働きに影響され、交感神経が盛んに働いているときには分泌量が減り、副交感神経が盛んに働いているときには分泌量が増えます。夕方以降は副交感神経の働きが盛んになっているため、夕食では糖質と脂質の摂りすぎは血液中の中性脂肪とLDLコレステロールを増やすことになるわけです。
それでは動脈硬化を予防して、認知機能の低下を防ぐためにはブドウ糖が含まれる糖質を制限すればよいと考える人も出てきます。血糖は血液中のブドウ糖のことで、ブドウ糖の量が減れば血糖値は下がります。しかし、ブドウ糖を減らしすぎると脳の機能には大きな影響が出てきます。体内でエネルギー源となるのは糖質、脂質、たんぱく質の三大エネルギー源であり、ほとんどの細胞が三大エネルギー源を用いてエネルギー産生を行っています。ところが、脳細胞はブドウ糖しかエネルギー源にできません。ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源であるため、これが不足するようなことになったら脳細胞が正常に働くことができなくなります。
脳には約140億個の脳細胞があります。そのすべての脳細胞は、それぞれの細胞の中で作り出されたエネルギーしか使うことができません。