222 インスリン不足でも運動をすると血糖値は下がる

膵臓からインスリンが分泌されると細胞にブドウ糖を取り込む働きをするグルコース輸送体のGLUT4が細胞膜に近づいてきて、ブドウ糖を取り込むことができるようになります。この働きが弱いとインスリンが分泌されてもブドウ糖が取り込まれなくなります。このことがすべての細胞で起こればブドウ糖が細胞で不足して大変なことになるわけですが、細胞によって状態にバラツキがあるので、ブドウ糖不足によって生命維持に影響が出ることにはなりません。しかし、細胞に取り込まれるブドウ糖の量は全体的に低下して、血液中のブドウ糖が濃い状態になります。これによって血管の細胞にブドウ糖に浸透して、細胞の代謝を低下させ、これが血管の老化を進めることにもなります。その結果が糖尿病の合併症である神経障害、網膜症、腎症で、神経細胞、網膜、腎臓は細小血管が多い部位で、血管の老化は血流障害につながるからです。
GLUT4がインスリンに反応しにくい人でもブドウ糖を多く取り込ませる方法があります。それは運動をすることです。運動を始めると急に多くのブドウ糖が必要になることから、GLUT4が細胞膜に近づいてきて、ブドウ糖を取り込めるようになります。糖尿病患者には食事療法と運動療法が指導されますが、運動によっても血糖値が下がりにくい人には食事療法が指導されて、それでも下がりにくい場合に治療薬(血糖降下薬)が使われます。治療薬を飲んでいるから食事制限をしなくてもよい、運動をしなくてよいということはなくて、運動をすることは最低限しなければならないこととされています。
糖尿病だけでなく、血糖値の上昇はインスリンを多く分泌させ、脂肪細胞の中に蓄積される中性脂肪を増やすことにもなるので、ダイエットを心がけなければならない人、メタボリックシンドロームの人、生活習慣病の改善を願っている人は運動が必要です。歩き始めてから10〜15分はブドウ糖が多く消費されるので、まずは短くてもよいのでウォーキングの機会を増やすようにします。