沖縄県民は「肉を多く食べてきたから健康長寿だ」と長らく言われてきました。日本本土では、仏教の影響もあって肉食は避けられていましたが、沖縄県は伝統的に肉食が盛んでした。動物性たんぱく質が不足している時代には、肉食は血管を丈夫にして、免疫を高めるなど寿命の延伸にはプラスに作用してきました。
沖縄県は飲酒量も多く、喫煙率も高いのに、長寿であるのは肉食のおかげとされてきました。しかし、今では肉食の多いことが動脈硬化を引き起こす要因となり、寿命を短くする結果となっています。急に肉食を増やしたわけではなく、歴史的に肉食が多かったのに、どうして寿命を短くしているのかと疑問を抱く人も多いかと思います。
肉食といっても昔は豚肉が主であり、今は牛肉が主となっています。豚肉は脂肪酸の種類では不飽和脂肪酸という植物油に多く含まれる脂肪酸の割合が高く、牛肉は飽和脂肪酸という血液の中で固まりやすく、動脈硬化を引き起こしやすいタイプの脂肪酸を多く含んでいるのです。
沖縄県は、今から74年前にアメリカ文化の影響を色濃く受けることとなり、ステーキやハンバーグ、サンドイッチ、アイスクリームといった食の欧米化が急速に進みました。いち早く欧米化したことが、生活習慣病を増やし、平均では沖縄県の都道府県別死亡率(2015年)は男性が17位、女性は27位となっているものの、沖縄県の男性の20~40代、女性の40代は都道府県別・年齢別の死亡率ではワースト5以内に入っています。
こういった沖縄県の食事の現状は、これからの日本人の健康長寿を考えていくための大きなヒントとなります。人間の体はたんぱく質でできているので、健康維持にはたんぱく質の補給は欠かせません。動物性たんぱく質では伝統的に食べてきた豚肉や鶏肉、卵の割合を増やし、さらに魚類からも摂るようにします。沖縄県の伝統食の島豆腐は大豆の量が多く、ミネラル分の多い水と、にがりに使われる海水のミネラルも含まれています。
沖縄県では色の濃い野菜や果物を多く食べていますが、この濃い色のもととなっている色素には、紫外線によって発生する活性酸素を消去する作用があります。沖縄県はコンブの消費量が日本一多いのですが、コンブは寒い海でしか発芽しないので沖縄では採れません。沖縄県は中国との貿易窓口として、コンブを輸出し、漢方薬を輸入する中継基地でもあったため、コンブは伝統料理に多く使われてきました。
このように地域では採れないものも含めて、さまざまな食品を生活の中に取り入れていくこと、つまり伝統料理のチャンプルーのように、いろいろなものを混ぜ合わせて食べることも沖縄県から学ぶべきではないでしょうか。