ホルモン分泌量は、男性では徐々に低下していくのに対して、女性は20~30歳がピークで、50歳前後になると女性ホルモン(エストロゲン=卵胞ホルモン)の分泌量は急激に減少し、身体にもさまざまな変調を起こします。これが更年期障害と呼ばれるものです。ホルモンの分泌量はピコグラム(1兆分の1グラム)という極めて微量です。1兆分の1というのは、25メートルプールの水に1滴という量に当たります。
こんなにも少ない量で働いているだけに、水や空気の汚染、飲酒や喫煙、農薬や食品添加物、疲労や睡眠不足、体の酸化、活性酸素の大量発生、ストレスなどの影響を受けやすくなっています。
食事の内容にも影響されますが、ホルモンを増やす役目をする食品もあります。それはコレステロールです。コレステロールはホルモンの原料で、肉食が増えるとホルモンの分泌量も増えていきます。不足するホルモンが、一方で増えていくのなら問題がないのでは、と考える人もいるかと思います。しかし、必要とする量以上に増えると健康被害を引き起こすこともあるのです。最も注目されているのは乳がんの増加です。
肉食が増えると、乳がんの発症リスクが高まるのに対して、植物性ホルモンと呼ばれるイソフラボンは、逆に乳がんのリスクを下げることが知られています。
イソフラボンは、大豆に多く含まれている機能性成分で、女性ホルモンと同様の働きをするエストロゲン(卵胞ホルモン)活性が認められています。イソフラボンはダイゼイン、ゲニステイン、クメステロールなどの成分が組み合わされたもので、これまでにも、さまざまな研究が行われています。
精度の高い研究成果の一つに、厚生労働省研究班による多目的コホート研究という、数万人を対象とした10年間にわたる追跡調査があり、大豆イソフラボンと乳がんの研究については、好結果が得られています。それによると、みそ汁の摂取量が増えるにしたがって乳がんリスクが減少する傾向が有意に見られ、大豆・豆腐・油揚・納豆の摂取と乳がんリスクについては、統計学的に有意とはいえないものの摂取量が増えるにしたがって乳がんリスクが低下傾向にあることがわかりました。
大豆・大豆製品は、商品によってイソフラボンの含有量が異なることから、イソフラボンの量に注目して調査したところ、摂取量が増えるにしたがって乳がんリスクが減少する傾向が有意に観察されました。イソフラボンは女性ホルモン作用があっても、肉類のように乳がんを増やすことはなく、逆に乳がんにはプラスであり、女性ホルモンが適度に健康効果をもたらすことが、この結果から知ることができます。