国民の寿命が延びるほど、がんで亡くなる人が増えるのは、世界的な傾向です。かつての日本人には胃がんが多く、大腸がんが少ない国民でした。それに対してアメリカでは胃がんが少なく、大腸がんが多くなっています。その違いの原因として考えられているのは、食物繊維の摂取量の違いです。
食物繊維は便通をよくして、大腸に有害物質がとどまる時間を短くするとともに、腸内で腐敗を進める腸内細菌の悪玉菌を減らし、腐敗によって発生する毒素を減らして、大腸壁への刺激を減らすことから大腸がんの発生を抑えると説明されています。
食物繊維は胃壁を傷つけるともいわれていますが、塩分の摂取量が多いと胃粘膜を減らすことから、胃壁が傷つけられやすくなります。食塩と食物繊維が多かった以前の日本人の食事は、胃がんを引き起こす原因にもなっていたのです。
実は、アメリカでも胃がんが多かった時代はあります。それは、冷蔵庫が家庭に普及していなくて、塩に漬けて保存性をよくした塩蔵肉を多く食べていた80年ほど前のことです。アメリカ人は肉食が多く、動物性たんぱく質と脂肪は腸内細菌の悪玉菌を増やし、腸内で発酵を進める善玉菌を減らして腸内環境を悪化させます。そのことが大腸がんを増やす原因となっています。
日本人の便通回数は1週間に平均7回となっています。便通が毎日ない人も1日に複数回の人も合わせて、平均すると毎日1回あることになります。それに対してアメリカ人は週に3~4回であり、便通が1日や2日なくても便秘ではないという感覚なのです。
日本人は戦後、食生活が大きく変わり、徐々に食事の洋風化が進んで肉食が増え、それが大腸がんを増やしてきました。
悪玉菌を増やす肉食が増えた分だけ、善玉菌を増やす食物繊維を多く摂って、便通をよくすることが解決の手段といえます。