日本人が長生きであるのは同じ脂肪であっても、魚油を多く摂っているからで、中でもマグロや青背魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といったオメガ3(n‐3系)が血流をよくすることから、健康増進効果が高いとされています。
そんな日本人でも、肉類の摂取量は今から70年ほど前の終戦後に比べると5倍以上にもなっています。日本人は、もともと脂を多く摂ってこなかったために、脂の害を避ける能力は弱く、体質に合わない脂を多く摂ると健康被害が現れやすいのです。だから、オメガ3の脂肪酸を増やす食事を、まずは考えるべきです。
とはいっても脂を減らした食事には変えにくく、継続もしにくいものです。その一番の原因は「脂肪はおいしいから」です。脂肪をおいしく感じるのは、遺伝子に組み込まれた記憶といえます。脂肪のエネルギー量は1gあたり約9kcalで、たんぱく質と糖質は約4kcalなので、2倍以上のエネルギー量があることは、よく知られています。
少ない量で多くのエネルギー量が摂れることは、食べ物が少ない時代を生き抜くには大切なことでした。できるだけ多くのエネルギー量が摂れるものを食べられるように、脂がおいしいと脳に刷り込まれてきたわけです。その記憶は、食生活が豊かになった今も代わることがなく、脂を多く摂りすぎるようになってしまったのです。特別に意識をしなくても、脂は摂りすぎるのなら、意識をして摂るべきなのは油です。
魚類や植物油に多く含まれるオメガ3の油は中性脂肪やコレステロールを減らし、生活習慣病のリスクを低減させる作用はあるものの弱点もあります。それは酸化しやすいことです。また、加熱によって酸化が進みやすく、トランス脂肪酸を生成させます。トランス脂肪酸を多量に摂取すると悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールを増加させ、心臓疾患のリスクを高めます。
魚油は、もともとトランス脂肪酸は含まれていないものの、加工食品の場合には、高温での加熱や脱臭の工程などで発生することがあります。魚油を原料にしたサプリメントはDHAやEPAを凝縮した状態で多くを摂ることができるので愛用している人も増えていますが、加工法によっては、せっかくの成分が劣化したり、トランス脂肪酸を生成させることにもなるので、特に注意して選ぶようにしたいものです。