酒は百薬の長――この言葉が使われ始めた時代には、酒といえば日本酒でした。日本酒の健康効果として、アミノ酸の有効性などが指摘されているものの、飲酒によって血行をよくして、食欲を増進させることが健康維持の第一番とされています。今では、いろいろな種類のアルコール飲料を楽しめるようになったので、適度な飲酒なら、日本酒でなくても何を飲んでも、この効果は得られるはずです。
100歳以上の長寿者の約6割は適量の飲酒をたしなんでいるという調査結果もあります。だから、飲酒をしたほうが長生きといわれることがありますが、健康を維持している人は肝臓が丈夫であるという調査結果もあり、長寿者になっても飲酒できる人は長寿者であって、飲酒すれば長生きできるというわけではありません。
厚生労働省によるコホート研究で、宮城県内の40~64歳の男女4万7605人を対象に飲酒による死亡リスクを調査していますが、それによると男性では非飲酒者に比べて飲酒者は死亡リスクの上昇が見られ、さらに飲酒量が増えるほど死亡リスクが上昇していました。中でも、日本酒換算で3合に相当するアルコール消費量68.4g以上を1日に飲んでいた人は、非飲酒者に比べて62%も死亡リスクが高まっていました。
女性も、飲酒量が増えるほど死亡リスクが上昇し、1日の飲酒量がアルコール消費量68.4g以上では、非飲酒者に比べて98%も死亡リスクが高まるという結果になりました。男性は、どの年齢層でも飲酒量が増えるほど死亡リスクが高まっていましたが、女性では40~49歳で飲酒による死亡リスクが顕著に上昇していました。
飲酒によるがん発症リスクについても宮城県内の40~64歳の男性女2万2836人を対象にコホート研究が行われています。それによると、非飲酒者に比べて飲酒者は全がんで発症リスクが上昇し、さらに飲酒量が増えるほど全がん発症リスクが上昇していました。中でも、日本酒換算で2合に相当するアルコール消費量45.6g以上を1日に飲んでいた人は、非飲酒者に比べて約40%死亡リスクが高まっていました。