気になる腹部の脂肪を減らすために、腹部に巻いておくだけでスリムになる、という謳い文句の商品をテレビの通販番組で見ていて、気になることがありました。腹筋を細かく、数多く振動させることで筋肉をつけて、しかも脂肪が減るなら、こんなによいことはありません。苦しい腹筋運動をしなくても大丈夫、という言葉にも引かれます。そこでテレビ画面に出ている電話番号にアクセスするということになるのでしょうが、電話をする前に立ち止まって考えてほしいのは、筋肉をつける運動で腹部の体脂肪が効果的に減らせるのか、ということです。
筋肉の種類は大きく二つに分けられます。一つは白い色をした白筋で、早く動かして、一時的に大きな力を出すことができます。その性質から速筋とも呼ばれています。重いものを持ち上げたり、筋肉トレーニングによって刺激して増やすことができます。もう一つは赤い色をした赤筋で、短時間に大きな力は出せないものの、持続して力を出し続けることができます。こちらの筋肉は遅筋とも呼ばれています。
白筋は白身魚に、赤筋は赤身魚に例えられます。白身魚は普段は動いていなくても敵が現れると急に動いて逃げることができます。赤身魚は急に早くは動けないものの、長く動き続けることができます。人間の筋肉は白身と赤身のように明確に分かれているものではなくて、白筋の筋繊維と赤筋の筋繊維が束になって筋肉が構成されています。筋繊維は細いもので、短時間の強い刺激によって白筋が増え、長時間の弱い刺激によって赤筋が増えていきます。
テレビ番組で紹介された腹筋を振動させることによって増えているのは白筋です。白筋と赤筋ではエネルギー源としているものが違っています。白筋はブドウ糖で、赤筋は脂肪酸です。腹筋を刺激して直接的に減っているのはブドウ糖となります。それなのに腹部の脂肪細胞の中に蓄積されている中性脂肪が減っているとしたら、そのメカニズムが気になります。身体の中に入ってくるブドウ糖が減るか、白筋を刺激する運動によってブドウ糖が消費されると全体のエネルギー量が減ることから、脂肪細胞の中の中性脂肪が分解されて脂肪酸が血液中に放出されます。
放出された脂肪酸は血管を通って、筋肉細胞に運ばれて、ここでエネルギーとなります。もちろん脂肪酸を燃焼させるのは赤筋です。脂肪細胞は振動などの刺激を受けて、その部分の脂肪細胞の中の中性脂肪だけが分解されるのではなくて、脳から指令が出されて、全身の脂肪細胞から同じような割合で分解されて放出されます。気になる部分には多くの脂肪細胞があって、多くの中性脂肪が蓄積されているので減りやすいのは事実です。しかし、そこの部分だけが減っているわけではないことだけは知っておいてほしいのです。