消化酵素が含まれた食品なら肉まで分解してくれるのか

ワサビの産地の高原を訪問するテレビ番組で、牛肉ステーキにワサビをつけて食べるシーンがあり、それにコメントしていた専門家らしき人が「ワサビの辛味成分には消化作用があるので、肉の消化をよくしてくれる」という話をしていました。この話に従うなら、ワサビをつけて食べると肉は消化されて吸収もよいということになります。栄養学を学んでいれば、そのようなことは話さないはずですが、コメントをしている人の肩書きを見て、納得をしました。
一緒にテレビ番組を見ていた人は、フードマイスターの上位資格を持っている人だから信じてしまいようになった、と話していました。その資格名称はスーパーフードマイスターでした。しかし、これはスーパーフードと呼ばれる栄養価が高い食品の知識を持っている人の民間資格で、ワサビについて詳しいのかは疑問です。
ワサビの辛味成分はアリルイソチオシアネートですが、辛味成分で胃が刺激されて消化液が分泌されやすくなるとしても、この成分は消化酵素ではないません。ワサビの根にはアミラーゼという糖質の消化酵素が含まれています。肉のたんぱく質の消化酵素はペプシンやプロテアーゼ、脂肪の消化酵素はリパーゼで、これらはワサビには含まれていません。アミラーゼは、以前はジアスターゼと呼ばれていたことがあり、これは大根などにも多く含まれていますが、あくまで糖質の消化酵素です。
フードマイスターが名称についた資格には、ソイフードマイスター、ローフードマイスター、アスリートフードマイスター、スポーツフードマイスター、ヨギーズフードマイスター、ナチュラルフードマイスター、ウェルビーキングフードマイスター、ヘルスフードマイスター、ヘルシーフードマイスター、オーガニックフードマイスター、メンタルフードマイスターなどがあります。北海道フードマイスター、京都フードマイスターという地域版まであって、こうなるとまだまだ登場しそうです。同じような名称でも、何が専門なのか、何が得意なのかを知ってから、コメントを任せるようにしてほしいところです。