「糖尿病は認知症になりやすい」というのは本当か
糖尿病の患者は約1000万人、その予備群は約1000万人で、合計2000万人という数字は国民健康・栄養調査の対象者の成人人口の約1億人から計算すると5人に1人となります。糖尿病は重大な状態でも、糖尿病予備群と言われると、そんなにひどい状態ではないと思いがちです。しかし、糖尿病としてカウントされているのは「糖尿病が強く疑われる人」であり、予備群のほうは「糖尿病の可能性を否定できない人」となっています。つまり、予備群といっても、少し危険度があるというような状態ではなくて、すでに糖尿病になっている人も含まれているということです。
そんな糖尿病が国民病となってしまった今の時代は、超高齢社会に突入したこともあって認知症も急増しています。認知症患者は2015年には高齢者の7人に1人の割合ですが、2025年には5人に1人になると推計されています。認知症の予備群とされる軽度認知障害と合わせると2.8人に1人にもなると推計されているのです。
そんな状況を背景として、厚生労働省研究班ががん・糖尿病と認知症・軽度認知障害の関連についての大規模コホート研究を実施して、その成果を報告しました。長野県佐久保健所管内の住民の中の40〜59歳の約1万2000人のうち、平成26〜27年に行った“こころの検診”に参加した人の1244人のデータに基づいて、中年期のがんと糖尿病の罹患と認知症・軽度認知障害との関連を調べたものです。こころの検診で1244人のうち421人が軽度認知障害、60人が認知症と診断されました。
糖尿病について罹患しているグループと罹患していないグループに分けて、その後の認知症と軽度認知障害のリスクを比較したところ、糖尿病に罹患しているグループで認知症リスクが高いことが確認されています。また、がんと糖尿病の両方に罹患している場合には軽度認知障害と認知症のリスクが高いことが確認されています。糖尿病はインスリン抵抗性を高めることで、がんのリスク要因となっています。また、がんに罹患するとインスリン抵抗性が高くなることも知られています。
糖尿病はブドウ糖の細胞への取り込みが低下しているために血糖値が高くなるわけですが、脳細胞はブドウ糖しかエネルギー源とすることができないので、糖尿病では脳細胞が栄養不足になって、軽度認知障害と認知症のリスクが高まると考えられているわけです。