発達障害に根拠のない叱咤激励はつらい

持って生まれた能力を伸ばし、花開かせるには叱咤激励が役立つことは、一般にという条件つきなら認められることです。これが発達障害児への対応となると、肯定することはできません。発達障害は脳の機能の発達のズレがあることから、周囲になじめず、変化にも対応できないというつらい思いをしています。そのつらさが周囲からはわかりにくいということから、普通の子どもに対するのと同じように、これまで経験してきたことをなぞるように、ついつい頑張らせるような声をかけてしまうという大人が少なくなりません。
発達障害の子どもは、ある意味では頑張ってもらわなければならない状況もあるのですが、そのときにスポーツ選手を応援するキャスターのような勢いのままに、「頑張ればできる!」「やればできる!」「君ならできる!」「他の子も頑張っている!」と言ってしまったら、これは応援をしているのではなくて、その子どもの乗り越えようとしている気持ちを押さえつけるようなことにもなりかねません。
その発している言葉が、それぞれの子どもの特性を充分に理解して、以前にクリアしたことがあることの一歩だけ先のことならまだしも、乗り越えられずに失敗体験となり、自信喪失につながってしまうようなことにチャレンジさせることは避けなければなりません。
根拠のない叱咤激励は絶対にダメということですが、では根拠があればよいのかというと、科学的、医学的な根拠があれば言ってよいのかというと、そうではありません。子どもの特性に合った合理的な根拠を示す必要があります。その合理的な根拠を示すに当たっては、どのような困難を抱えているのかを理解することが大切で、発達障害の子どもが二次障害になることを予防するといった意識で、声かけの内容を考えなければならないということを、家族や教師、それに幼い子どもには難しいことかもしれないのですが、一緒にいる機会が多い同級生などにも知っておいてほしいことです。