発達障害児の親にも根拠のない励ましは避ける

発達障害児には根拠のない励ましをすると、それは状態を悪くさせることにもなるという話を以前にしました。周囲からは注意をしていないように、頑張っていないように見えたとしても、本人は頑張っていて、それが生きにくさにつながっているからです。発達障害を理解せずに、普通とは違った行動をする人を叱ったりすると、状態を悪化させるようなことにもなりかねないのです。
これは子どもに限ったことではなく、発達障害児の親も大きな悩みを抱えていて、頑張っても、それが報われない、周囲から厳しい目で見られるということがあります。子どもが発達障害の特性そのものの行動をしたときに、「親の躾(しつけ)がなっていない」という視線を向けるだけならまだしも、言葉にして親のほうを叱る人までいます。
叱るのとは逆に、頑張ってほしいと励ます人もいるのですが、頑張っている人にとっては、これは辛い言葉にもなります。発達障害児の親の集まりでのこと、「発達障害児は優れた能力を秘めているのだから、それを引き出してあげなければいけない」という発言している人がいました。これが発達障害児の面倒をみてあげたことがない人の発言だったらわからないでもないのですが、発達障害児の親の発言であったことを知ったときには驚いてしまいました。
発達障害児の中でも、自閉症スペクトラム障害の子どもの中には飛び抜けた才能を発揮することは確かにあります。しかし、全員ではないのです。期待をかけすぎることは子どもにも、その親にも酷なことです。発達障害児の割合は10%とされていますが、その中の10%ほどからは優れた才能が認められるという報告があります。この確率で計算をすると1%になります。子どもが100人いれば、1人くらいは周囲を驚かせるくらいの天才、秀才がいても特別なことではないかもしれません。
励ますことはいけないとは言いませんが、励ましすぎ、根拠のない励ましは励ましているというよりも、まるで責めているようなことにもなりかねないということを知っておいてほしいのです。