「こちらの症状を抑えれば、あちらが悪くなる」という話

病気の状態を改善するための医薬品は、的確に使えば、望むような好結果が得られるはずです。だから、状態に合わせて使ってほしいと望んでも、それが許されないこともあります。こういった話をすると、卑近な例でないとわかりにくいという声もあることから、日本メディカルダイエット支援機構の理事長の話を書かせてもらいます。
理事長は以前に一過性脳虚血発作を起こして、血流を促進するためにエパデールというEPA製剤を処方されています。血液をサラサラにするとされるマグロの油を濃縮して、薬にしたものです。一過性虚血発作というのは、血栓が血管に詰まって脳梗塞と同じ症状が一時的に起こって、短時間で消失するものです。24時間以内に消失するのは一過性脳虚血発作、それ以上に継続するのが脳梗塞とされていますが、通常の一過性脳虚血発作は1時間以内で症状がなくなるとされています。
どんな症状なのかというと手足の痺れや運動障害、言葉の障害などが起こるのですが、わかりやすくて早期発見できるのは言葉がうまく話せなくなることです。理事長の場合は言葉に出たので、すぐに病院で処置を受けることができたために、悪化せずに済んだものの、元の状態に戻るまでに2週間ほどはかかりました。
それ以降はエパデールを続けて飲んでいたのですが、軽微な手術を受けるときに、出血が止まらなくなるのでエパデールを中止するように言われました。血液をサラサラにする効果がある薬は、出血にはよくないものとなります。軽微な手術の部位は大腸でしたが、内視鏡で検査をしたら、回盲部という小腸と大腸のつなぎめ、詳しくいうと回腸と盲腸の間にある弁の周りが腫れていて、出血が続いていました。大腸の最深部なので手術は難しく、本来なら出血を止める薬を使うところなのでしょうが、出血を止める薬は脳血管の詰まりを誘発する可能性があります。
回盲部と脳血管の、どちらを選択するかとなると、当たり前の選択は脳血管のほうになります。まだ出血量は多くはないということなので、出血覚悟で血液サラサラの薬を飲み続けているのです。