高齢者は薬の副作用が起こりやすいのか

高齢者は薬の副作用が起こりやすいので、注意が必要だと言われます。その注意というのは、薬を与えすぎないことという意味で使われることが多くなっています。日本の医療費で薬が占めるのは30%ほどで、これは先進国でトップとなっています。それだけよい薬が多いということなのか、技術ではなく薬に頼っているのか、それとも薬代で利益を得ようとする医療機関が多いからなのか議論が別れるところですが、稼ぎを増やすために薬の種類と量を増やすというのは例外的なことではありません。
高齢者に医療機関で処方される薬による副作用は、6種類以上になると頻度が高まり、副作用の発生は10%を超えるとされます。副作用は、たまに起こる、人によって稀に症状が出ると説明されることが多いのに、10%というのは高率です。その副作用は、ふらつきが多いのですが、転倒や物忘れも指摘されています。転倒したのでは骨折、寝たきりの可能性が高くなります。物忘れのほうは、副作用のせいなのに、他の原因が疑われて別に薬が出されたりしたら、さらに副作用の可能性が高くなってしまいます。
高齢者は、若いときのように完全に治そうとするのではなく、副作用のことを考えて、薬の飲み過ぎを抑えてほしいというのは、日本老年医学会、日本老年薬学会が呼びかけていることです。
高齢者になっても薬の吸収率に変わりはありません。高齢になって変わるのは分解と排泄の低下で、肝臓での分解能力が低下すると体内に残る薬が増えます。腎臓の機能が低下すると排泄されずに再び血液中に戻る量が増えていきます。そのために臓器などに残る薬が増えてしまうのです。
日本老年医学会は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」の中で、75歳以上には慎重な投与が必要な薬として不安症・うつ病の薬、循環器病の薬、糖尿病の薬を示しています。循環器病の薬の中でも抗血栓薬は血液の凝固を防ぐものの、出血の危険性を高めてしまいます。糖尿病の薬は使い方を謝ると低血糖を起こして、これが全身の働きに影響を与えることになります。
75歳未満なら大丈夫かという例は出されていないのですが、機能低下には個人差があり、60歳を超えた段階から注意が必要になるのは当然のことです。