高齢者は交感神経の働きが弱くなるのか

高齢者のイメージというと、落ち着いた雰囲気があり、怒りっぽい人は例外的だと思われがちです。しかし、高齢者は興奮しやすく、感情の抑制ができにくいということが自律神経の研究から言われるようになりました。
自律神経は内臓の働きを調整している神経で、興奮系の交感神経と抑制系の副交感神経があります。内臓の働きを活性化させるためには交感神経の働きが盛んになる必要があり、働きが盛んになりすぎたときには副交感神経が働いて調整してくれます。
年齢を重ねると身体の調整能力は変化してきますが、高齢者になっても交感神経の働きは大きくは変化しません。急な対応をしなければならないときには、どんな年齢であっても交感神経の働きが盛んになります。それに対して副交感神経の働きは年齢を重ねると低下してきます。
交感神経の働きが盛んになると血圧の上昇、心拍数の増加、呼吸数の増加が起こり、全身の細胞の代謝を高めます。これによって内臓の働きが盛んになっていくわけです。しかし、すべての内臓が交感神経によって働きが盛んになるわけではなくて、消化と吸収に関わる胃と腸の働きは副交感神経の働きによって向上していきます。
昼間には交感神経が中心に働き、夕方以降は副交感神経が中心になります。夕方から朝にかけては、消化と吸収を進め、腸の蠕動運動を盛んにすることで朝に便通が起こるようにしています。そのために消化、吸収、排泄に関わることは副交感神経がコントロールするようになったわけです。
このことから高齢になると胃液の分泌量が減り、消化が進みにくくなるだけでなくて、胃液が減ることで酸性度が低くなります。強酸性の胃液が腸に運ばれることで、腸内環境は酸性化され、酸性環境で増殖する腸内細菌の善玉菌が増えやすくなり、悪玉菌が増えにくくなります。その逆のことが高齢者には起こっているので、善玉菌を増やすために善玉菌のエサとなる糖質と食物繊維を摂り、悪玉菌のエサとなる動物性たんぱく質と脂肪は減らすようにすることから始めることがすすめられます。