発達障害の多動性は動きたい自然の行動

発達障害の注意欠如・多動性障害は、じっとしているのが苦手で、教室や職場で椅子に座り続けることができない、電車の中で動き回るということをしてしまいがちです。それは我慢ができない特性だと言うのは簡単ですが、長距離の移動では、ついつい身体を動かそうとするのは誰にも普通に起こることです。飛行機の長時間の移動のときには、特にすることがなくても通路を歩くのも、よくあることです。「運動不足の解消」などと言いながらも、少しくらいの歩行で解消できるようなことはないはずです。それをわかっていても歩いてしまうのは、固有感覚と前庭感覚と呼ばれています。
感覚というと五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)が一般的ですが、固有感覚は筋肉や関節に感じる感覚であって、身体の位置や活動時の力加減を理解するために使う感覚のことを指しています。前庭感覚は身体全体のバランスを取る感覚のことで、平衡感覚とも呼ばれる姿勢を保ったり、活動時のスピード理解のために使われる感覚を指しています。固有感覚と前庭感覚は、身体を動かさないでいると情報として得ることができません。そこで筋肉や関節を動かし、回転や揺れ、バランスなどの外からの刺激を得ようとします。
注意欠如・多動性障害の子どもは、動いて固有感覚と前庭感覚のための刺激を受け入れようとする気持ちが強い、もしくは受け入れるための器が大きいために、より多くの刺激を取り入れようとすることから、少しでも時間があれば身体を動かすようになります。
身体を動かすのが当たり前だといっても、落ち着いていてほしい場面では、できれば無駄な動きはしてほしくないというのは当然の感情です。多動性傾向がある子どもは、刺激を求めていることから、筋肉と関節を動かすように手足のマッサージをする、手をつないで歩く、手の刺激を変えてみる、指相撲をするといったことが有効になります。
電車の中で座っていられない、走り回るという子どもの場合には、電車の中で手をつなぐ、電車の中で席を変わる、停車駅でホームに降りて次の電車に乗る、といった方法も試す価値があります。身体を動かす代わりに電車の中で吊り広告などを見て話しかける、車窓から看板を見る、色や形を決めて探してみる、といったことで身体を動かす代わりの刺激を与えるということも効果があります。