塩を使うと甘味も脂味も感じやすくなるメカニズム

昔から西瓜に塩を振ると甘くなるということが言われていて、実際に試してみて甘く感じたことを経験した人は多いかと思います。多いかと思います、と言っても、今どきの西瓜は甘い品種が多くなり、塩を振りかけて甘さを増すようにしようと考える必要もなくなっています。
舌で味を感じる味蕾は、すべての味を感じるセンサーが備わっています。その中でも敏感なのは塩味に反応するセンサーです。その塩味センサーは塩味だけでも反応するのですが、甘味センサーは甘味成分だけでは反応しないようになっています。甘味センサーの受容体は甘味成分だけでは反応が起こらずに、甘味成分を取り込むことができません。ところが、ナトリウムがあると受容体が反応して甘味成分を取り込める仕組みになっています。
甘いものの味は、甘味成分だけで感じてくれたなら、余計な塩分を摂らなくて済むのですが、甘味センサーの特性のために、どうしても塩分が必要という身体になってしまったのです。
センサーの受容体が働くためにナトリウムが必要となるものは、まだあって、それは旨味と脂味です。出汁に少しだけでも塩を加えると旨味が格段に向上するのは、ほとんどの人が経験していることです。脂味という言葉は聞きなれないかもしれませんが、甘味、塩味、酸味、辛味、苦味、渋み、旨味の七味に続く第八の味覚とされていて、脂肪が多く含まれるものをおいしく感じる味覚となっています。肉に塩を少しだけ加えるだけでおいしさが違うのは、肉の主成分のたんぱく質ではなくて、脂肪(脂質)のほうだったということです。
ナトリウムは生命維持に欠かせない成分で、塩を使わなくても、食品の中に天然界のナトリウムが吸収されて含まれているので、1日に2gほどは摂ることができます。生命維持の最低限度の量は約1.5gとされているので、本来なら味付けなしでも構わないはずです。それなのに塩分をおいしく感じて多く摂るのは、進化の過程で穀類と野菜を多く食べるようになって、カリウムを摂りすぎたために、過剰なカリウムを腎臓で排出するために必要なナトリウムを摂るために身についた本能だということです。