記憶が鮮明に残る発達障害の特徴

発達障害の子どもは、目で見たものが画像として記憶されて、その画像を正確に描くことができるという特殊能力があることが指摘されます。放浪の日本画家の山下清は、目で見たものを記憶して、それを帰宅してから正確に描くことができるという特殊な能力を発揮していました。その能力は、現在のように画像処理、デジタル記憶がない時代には、驚くべき能力であったはずです。しかし、今の時代には、精神的に追い詰められる能力ともなりかねません。
発達障害児の中でも誰もがというわけではないものの、心にショックとしなった出来事は、クッキリとした記憶として記録されます。記憶というのは曖昧なところがあって、しっかりと目で見たものが詳細まで正確に記録されるわけではありません。ところが、発達障害児の中でも自閉症スペクトラム障害の中には、シャッターを切って記録したように鮮明に記録されてしまうことがあります。過去の記憶を思い起こして、パニックを起こすようなことをトラウマ(Trauma)と呼んで、これは心的外傷(精神的な外傷)とされています。
自閉症スペクトラム障害は、集中力が優れているものだけに、心の中に残っている画像記録が鮮明に蘇って、精神的なショックを与えることになります。その画像がショックそのものになるだけでなくて、過去の嫌であった記憶を蘇えさせることにもなります。その記憶が精神的なプレッシャーになり、発達障害の状態を引き起こすことにもなります。
家で自分が常に使っている茶碗では特に問題がなく食べることができる子どもが、他所の家に行って普段とは違う茶碗となると突然にして食べられなくなることがあります。日本人は、手の大きさに合わせた茶碗を選んで食べるというのが一般的ですが、大きさが違って、しっくりとこないと持ちにくくなり、食欲にも影響が出てくることにもなります。
決まった茶碗でないと食べられなくなるということは、普通では考えられないことかもしれませんが、それを見て状態がよくなったと言い切ることは本来ならあり得ないことです。
通常では考えられないこととしては、ほとんどの皿の上に乗っている食品を食べることができても絵柄の皿では食べられない、いつも使っているコップでなければ、いつもと同じ飲み物であっても飲むことができないということもあります。
いつもと違う箸だと食べにくいというのは普通では起こりにくいことですが、箸が変わっただけでも食べにくくなり、それが食欲や食事の結果にも影響を与えることがあります。そんな、わずかなことでもと思えるようなことでも、発達障害では起こってしまうことなのです。