発達障害は、障害という名前ではあるものの、障害ではないということは以前から伝えさせてもらっていますが、病気なのかというと、私たちは「脳の特性、脳の発達のズレであって、病気ではない」という認識をしています。脳の発達が通常とは違っているために、特定の分野は極端に苦手である一方で、ある分野は特定のことに非常に優れた能力が発揮されるということも珍しくありません。
得意なことと苦手なこととの差は、発達の凸凹(でこぼこ)であって、この差は程度の差はあっても誰にもあることです。その凸凹が生活に支障を起こしているのが、発達障害であると考えられています。発達障害は病気ではないというのは共通認識となっています。病気というのは、原因があって、それが明らかにされていて、治療法があるものをいいます。その点では発達障害の原因は多岐にわたっていて、不明な点が多く残されていることから確実な原因は明らかにされていません。複数の要素が関係していて、現状では遺伝的、胎児期の保健状態、出生時の環境、感染症、環境要因などがあげられています。
双子研究によって遺伝要因と、それ以外の要因の影響度を算出することが可能となっていますが、自閉症スペクトラム障害と注意欠如・多動性障害(ADHD)に関しては遺伝要因の影響が大きいことが確認されています。大部分の発達障害は乳児出生前に形成されますが、一部は出生後の外傷、感染症、その他の要素に起因することもあります。さまざまな原因があって確定できないものの、例として遺伝子や染色体の異常(ダウン症候群、レット症候群など)、妊娠中か生後7か月〜3年の環境、妊娠期の物質使用(アルコール、喫煙など)、妊娠期における感染症、未熟児出産があげられています。
近年の研究によって、遺伝要因と環境要因が複雑に組み合わさっていることがわかってきたものの、どのような遺伝子が関連して症状を引き出しているのか、親からの遺伝がどの程度なのか、遺伝しないで発症する確率がどのくらいかは明らかではなくて、環境要因についても何が大きく影響しているのかわからないことが圧倒的に多い状況です。
それでも発達障害は支援によって改善が図られることは間違いないことで、状態によっては治療薬による改善も認められていることから、病気と同じような対応が行われているのは事実です。