「日本人の食事摂取基準」は、厚生労働省が5年に1回発表しているもので、最新版の2020年版は2024年まで使われます。2015年版は大きな変化があったので、それに比べると今回の更新は少ない印象ですが、それでも特徴的な変化があります。その一つはエネルギー産生栄養素バランスの食事摂取基準で、三大エネルギー源のたんぱく質、脂質、炭水化物のエネルギーバランスが変更になったことです。
前回の変更では、たんぱく質の割合は男女ともに13〜20%とされていましたが、今回は40歳代までは同じものの、50〜64歳は14〜20%、65歳以上は15〜20%となりました。これは高齢になって筋肉が不足するために活動できなくなるフレイルを予防するためのことで、以前から「高齢者は肉を食べろ」ということを実現化させたものです。
肉には脂肪が多く含まれていますが、脂質の摂取割合は20〜30%となっています。これは前回に変わったことで、それ以前は20〜25%となっていました。これは単純に多くの脂肪を摂ってよくなったということではなくて、動物性の飽和脂肪酸は7%以下にして、魚や植物油に多い不飽和脂肪酸を多く摂ろうということです。そして、今回は飽和脂肪酸が3〜14歳は10%以下、15〜17歳は8%以下となりました。ちなみに飽和脂肪酸が多く摂りすぎると血液がドロドロになって動脈硬化のリスクが高まり、不飽和脂肪酸は血液をサラサラにしてくれて、動脈硬化のリスクを低下させるものとなっています。
炭水化物に関しては、以前から50〜65%のままとなっています。炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたもので、食物繊維は消化も吸収もされないのでエネルギーとはなりません。本来ならエネルギー量というときには糖質とするべきかと思います。糖質制限がブームになっている中、摂取エネルギー量の半分以上は糖質でというのは多すぎるように感じるかもしれません。しかし、糖質は、すぐにエネルギー化されやすくて、欠乏させることはできません。半分は糖質からという感覚で、食事をするようにしてほしいものです。