発達障害児の食事の苦しさを理解する

普通に食べられるものと思われているものなのに、それを口にしないのは一般的には好き嫌いと捉えられがちです。ところが、発達障害のために食べられないのは好き嫌いというレベルの話ではなくて、生理的に受けつけない、身体が拒否をしているという状態です。これを理解せずに、無理に食べさせようとすると将来に渡って食べられなくなったり、食べさせようとする親のことを嫌いになって口にできなくなるということにもつながりかねません。
このことを理解してもらうためには、より具体的な例をあげることが必要で、牛乳を飲めない子どもに無理に飲ませようとするのは「色は同じでもバリウムを飲ませるようなもの」という話をしています。バリウムを飲んで胃カメラの撮影をしたことがある人なら、そんなものを毎日飲まされたら、いかに大変かということが理解できるかと思います。それなのに牛乳が飲めない子どもには味に慣れさせるためにスポイトで1滴からでもよいので飲ませよう、という指導をする人がいます。
牛乳なら飲めるはずと思っても、簡単にいかないのが自閉症スペクトラム障害に多くみられる感覚過敏で、視覚過敏のせいで白いものが飲めないという子どもがいます。白いものは眩しくて見るのがつらいということもあるのですが、その逆に白い食べ物、白い飲み物しか好まないという子どももいます。欧米では黄色いものしか飲食できないという子どもが多いのですが、子どもに摂ってもらいたい牛乳・乳製品とご飯、うどん、パン、豆腐は白いので、これは幸いなことです。
牛乳が苦手だという子どもは色や味、喉の通り方といった五感に関する理由だけでなくて、牛が怖いから、臭いで嫌な思い出があるからということで飲めなくなったということもあります。牛の絵を見ただけでも嫌な思い出あり、牛乳は飲めてもパッケージが嫌という例もあります。友だちが牛乳を履いたことがあり、その記憶から飲めないという例まであります。こうなると食事指導や食べ方指導では、どうにも対処できないことです。
学校で他の子どもは飲めているのに、自分だけが飲めないというのも、子どもにとっては大きなプレッシャーになっています。そのことを周囲から責められると、もっと苦しいことになるので、そこは親も教師も気づいてあげて、対処すべきことです。