発達障害の自閉症スペクトラム障害にみられる感覚過敏の中で食事に調節的に影響してくるのは味覚過敏です。味覚過敏には特定の味をすごく嫌がるということから、食感に関わるものまで幅があり、さらに感覚の程度にも大きな差があって、どの程度のものなら食べてもらえるかを判断するのが難しくなっています。このような状況に対応するためには、健康を維持して、発達障害の状態を改善するために本当に食べさせなければならない食品なのかを知ることが必要になります。
発達障害児が過敏に反応する特定の味というのは酸味、苦味、渋味、辛味、塩味を指しています。赤ちゃんのときには安心できるのは甘味で、それ以外の味は受け入れようとしないのは当然の反応です。もともと酸味は腐ったもの、苦味と渋味は毒物と感じさせるもので、刺激的な辛味も受けつけない味です。辛味は唐辛子の辛さだけでなく、山葵(わさび)や生姜(しょうが)、山椒(さんしょう)の味もあり、塩味も強くなると塩辛い味となります。
それが成長につれて、いろいろな食品を食べるようになって五感がわかるようになってくるのが通常の変化ですが、その成長の変化が起こりにくいのが感覚過敏の特性です。味覚は舌で感じているわけではなくて、舌の味蕾で受け取って、最終的には大脳皮質の味覚野で感じています。この伝達と判断の発達が遅れていると、幼いときのままの味覚が成長してからも続くことになります。
不快に感じる味のものを避けるだけでなく、普段から食べ慣れている味と違ったものには敏感に反応して、決まったものだけを食べ続けるということをします。味に敏感に反応するという特性から、単独の味のものは選択して食べることができても、複数の食品が混じっていると、これまでに受け入れてきた味とは異なることから、それを食べることを嫌がります。嫌がっても食べてくれるというならまだしも、絶対に食べられないということにもなります。
それぞれの食品がわかる状態なら食べられても、どんな食品なのかわからないと食べられなくなるということがあって、例えば肉ジャガなら一つひとつの食材を味わうことができるものの、カレーになると見分けがつかなくなって食べられなくなります。また、コロッケの中身も、いろいろな食材が混じっていると食べられなくなります。
味だけでなく、特定の食感をとても嫌がることがあり、ネバネバ、もちもち、シャキシャキ、パリパリといった食感のあるものが食べられず、そういった食感がある食品が一つだけ加わっただけで全体が食べられないということもあります。揚げ物の衣は食感だけでなく、口の中に刺さるような感覚があって食べられないということもあり、そのためにコロッケは衣をはがして食べようとしたら、今度は中身が混ざっていて食べられないということもあるのです。