脂肪が含まれた食品は太りやすいので、避けるようにしようと思っても、ついつい手が伸びてしまいます。それは「脂肪がおいしいからだ」と説明されることが多いのですが、本当においしいのか試してみたことがある人は少ないかと思います。この実験は簡単で、肉の脂身だけをカットして、これを加熱して食べてみれば、おいしいのかどうかがわかります。その結果は「おいしくない」です。
しかし、赤身だけの肉を食べるよりも脂身と一緒に食べるとおいしく感じます。また、脂肪が細かく入っている肉は、とてもおいしく感じます。そのことから、脂肪そのものをおいしく感じるのではなくて、脂肪が元々の食品の味をおいしく感じさせる作用があるのではないか、という考察をすることができます。
これはバターやマーガリンでも同じことで、バターを塗ったパンはおいしく感じます。バターとパンを別に食べてみて、まずは味を確認します。バターの脂肪の割合は80%以上で、他に水分が16%以上です。ビタミン、ミネラルも含まれているものの、わずかな量で、脂肪の味を確認するのに適した食品かもしれません。バターはおいしいものかもしれませんが、バターだけを100gも食べろと言われたら、いくら実験だと言われても拷問のようなものです。
そこでパンだけを食べたあとに、バターを塗って食べてみると、甘みや旨みを感じます。これはパンの味を強く感じるようになったことを示しています。脂肪が加わると舌の味蕾の反応が鋭くなって、おいしさにつながる甘味、旨味を感じやすくなります。
脂肪はエネルギー量が高くて、糖質とたんぱく質が1gあたり約4kcalに対して、脂肪は約9kcalと2倍以上となっているので、脂肪をおいしく感じるようになった、という説明をされることもあります。これは生命維持に必要なエネルギー確保のために遺伝によって伝えられた能力ですが、それを着実なものとするために味蕾の反応を変えていった、ということが定説として伝えられるようになっています。