発達障害の頑張るエネルギーはクエン酸で増やせるのか

発達障害の自閉症スペクトラム障害にみられる感覚過敏のうち、食事に直接的に影響する味覚過敏のうち、特に考えたいのは酸味の過敏です。酸味がある食品の代表というと柑橘類とされますが、柑橘類はビタミンCが多いだけでなく、クエン酸が豊富に含まれています。クエン酸は酸味成分そのものの有機化合物で、柑橘類のほかでは梅干しや酢(特に黒酢)に含まれています。
クエン酸は疲労回復の成分とされていて、それは全身の細胞で発生するエネルギーを増やす効果があるからです。細胞の中のエネルギー産生の小器官のミトコンドリア中には、TCA回路があります。TCA回路は発見者の名前(ノーベル賞受賞者のハンス・クレブス博士)からクレブス回路とも呼ばれますが、もう一つの呼び名はクエン酸回路です。エネルギー源のブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸はピルビン酸からアセチルCoAに変わり、TCA回路に入るとクエン酸に変化します。このあと複数の酸に変化しながら一周してクエン酸に戻ってきたときにエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が発生します。ATPからリン(P)が一つはずれたADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生します。
クエン酸が体内に多くあると、TCA回路のスタート地点の成分が多くなるということで、エネルギー産生が高まります。これは疲労が回復するという結果だけでなく、全身の細胞で作り出されるエネルギー量が増えることになります。細胞の中でTCA回路によって発生したエネルギーは、その細胞の中でしか使われません。その細胞で作り出されたエネルギーは他の細胞に流れていくことはない、いわば地産地消の状態となっています。全身の健康のためには、全身の細胞でエネルギーを多く作り出すために、クエン酸が有効になるというわけです。
クエン酸は黒酢にも多く含まれます。一般の酢(米酢)にはクエン酸も含まれるものの酢酸のほうが多く、クエン酸を多く摂ることができるのは黒酢のほうです。黒酢には特有の酸味があって、味覚過敏で酸味が苦手な人には取りにくいものですが、甘みをつけて酸味を感じにくくして飲むことは可能です。