発達障害の自閉症スペクトラム障害にみられる感覚過敏の中でも対策が必要なものとして、味覚過敏の酸味の過敏について先に紹介して、酸味が強いクエン酸を摂ることにとって体内のエネルギー産生を高めることについて説明しました。クエン酸が有効であるといっても、酸味に過敏で、酸味があるものを食べられない人には、甘味など他の味でカバーするのも難しいということもあります。細胞のミトコンドリアの中のTCA回路の働きを高める方法は、回路のスタート地点にあるクエン酸を増やすだけではなく、TCA回路の回転を全体的に高めるという手段があります。
TCA回路ではクエン酸から次々に別の酸に変化していって、一周するとエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が発生します。別の酸に変化するときにビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂がすべて必要になります。ビタミンB群は水溶性ビタミンで、体内に保持できる時間が短く、毎日の食事で摂る必要があります。ビタミンB₁とビタミンB₂は体内では24時間は保持できるので、1日に1回だけ摂ることでも対応できます。ところが、ビタミンB₆とビタミンB₁₂は12時間ほどしか保持できないので、朝食と夕食で摂っておかないと不足することになります。
ダイエットのためだけでなく、食事時間が取れない、できるだけ長く寝ていたいということのほかに、食欲が湧かないという理由などがあって、朝食を食べない人もいます。何かを口に入れているとしても、ビタミンB₆とビタミンB₁₂が含まれた食品を食べていないと、エネルギー代謝的には食べていないのと同じようなことになってしまいます。
ビタミンB₁は豚肉やレバー、大豆に、ビタミンB₂はレバーや魚、乳製品、卵、大豆に、ビタミンB₆は魚や肉、卵、バナナに、ビタミンB₁₂は魚や魚介類、肉に多く含まれています。これらの食品も味覚過敏のために食べられないという発達障害児はたくさんいます。レバーは大人でも食べにくい食品で、牛乳を飲めないという子どもも多くいます。牛乳は白い色が苦手、とろみを感じて飲めないというほかに、牛が怖いから臭いから牛乳が嫌で飲めないという子どももいます。
味覚過敏のために好き嫌いを超えて、生理的に受け付けない子どもたちのために、味覚障害と対応については、いくらでも考えなければいけないことがあります。