発達障害の感覚過敏の嗅覚と聴覚の過敏で食べられない

発達障害の自閉症スペクトラム障害にみられる感覚過敏について、視覚過敏の特徴について前に紹介しましたが、食事に関する感覚は一つの要素だけで決まるものではありません。味覚は嗅覚の反応があって、初めて本来の味覚が感じられるものです。鼻を塞いで食べると味がわからなくなるという身近な例からもわかるかと思います。
嗅覚過敏があると、苦手な臭いがあっただけで、味覚もおいしく感じられなくなるということがあります。焦げた臭いに過敏に反応する子どもは、味覚のほうでも苦味を感じるということが起こります。実際には苦味の成分は含まれていなくても、焦げた臭いが味覚の状態を変化させてしまっているということです。焦げたものは嫌な臭いだけではなく、香ばしい匂いとして感じることが多いのですが、焦げた臭いが苦手になると、本来ならおいしく感じるはずの匂いが嫌な臭いと感じてしまうので、食欲に影響するだけでなく、どうしても食べられないという反応になることもあります。
香辛料は、味と匂いでおいしさを感じさせて、食品に含まれている多くの栄養素を摂るための有効な手段となります。食が細い子どもであっても、カレーライスだけは食べてくれるということもあります。ところが、味覚過敏だけでなく、嗅覚過敏であっても、香辛料の刺激的な匂いが、その子どもにとっては嫌な臭いとなって、不快を感じてしまうことになります。自分が食べるものではなくて、デパートやスーパーマーケットの食品売り場で、香辛料の臭いが漂ってきただけで気分が悪くなる、売り場に足を踏み入れられないということも起こります。
次に聴覚過敏についてですが、特定の食べ物の音を嫌がる傾向があります。その音というのは、バリバリ、ガリガリ、パリパリ、サクサク、シャキシャキなど、さまざまですが、その音が苦痛で、固いものが食べられない、野菜が噛めない、野菜が食べられないという子どももいます。サクサクという感覚は揚げ物のおいしさを表現するときにも使われますが、コロッケを噛むときの音が嫌いということで、衣をはがして食べるという子どももいます。
食べ物のほうは平気でも、もしくは我慢の範囲であっても、ナイフやフォークが食器に当たる音が不快で、箸を使わないと食べられないという子どもいます。これも自分の食器だけの話ではなく、家族や外食店の他の客の出す音も嫌で、一人でないと食べられないということもあるのです。