浜松医科大学子どものこころの発達研究センターは、遺伝子解析によって自閉症スペクトラム障害と関連する遺伝子の変化がある子どもは1歳6か月の時点で特定の領域の神経発達に遅れがみられることを発表しています。
自閉症スペクトラム障害の発現には、さまざまな環境因子と遺伝子の変化が関連していることが明らかになってきています。この遺伝子の変化には非常に稀なものと頻度の高いものの2種類があって、大部分の自閉症スペクトラム障害では頻度の高い遺伝子の変化があり、それも複数が組み合わさって発症に関わっていると考えられています。そこまではわかっていても、頻度の高い遺伝子の変化が幼少期の神経発達に与える影響について、これまで明らかではありませんでした。
876人の参加者に約650万か所の遺伝子の変化が調べられ、自閉症スペクトラム障害に関連する遺伝子の変化の数と効果の大きさを考慮して、ポリジェニックリスクスコアを呼ばれる遺伝子リスクが算出されました。1歳6か月の時点での神経発達については、粗大運動、微細運動、受容言語、表出言語、視覚受容の5つの領域の発達が評価されました。
その結果、自閉症スペクトラム障害の発症リスクを高める遺伝子の変化を多く持っていると、自閉症スペクトラム障害の特性が強くなることが確認されました。ポリジェニックリスクスコアを用いて自閉症スペクトラム障害傾向との関連を解析したところ、ポリジェニックリスクスコアが高いと自閉症スペクトラム障害の傾向が強くなり、特に社会的コミュニケーションの苦手さが強くなることがわかりました。その一方で、自閉症スペクトラム障害の特徴であるこだわりの強さについては、関連は見られたものの、社会的コミュニケーションに比べると弱い関連となっていました。
自閉症スペクトラム障害と遺伝子の関連は明らかになってきたといっても、全員が遺伝子を調べられるわけではなく、自閉症スペクトラム障害で特に問題とされる社会的コミュニケーションの苦手さについても大きな差があります。となると、社会的コミュニケーションについての対策を、より積極的に進めなければならないということになります。