発達障害の一つにトゥレット障害があります。これはチックという神経精神疾患のうち、音声や行動の症状が慢性的に続くもの(突発性、急速、反復性、非律動的、常同的な運動や発声)を指しています。発症は18歳未満で、4週間以上持続するものをいいますが、半数は18歳までに消失するといいます。発現率としては1000人あたり3〜8人ですが、男子は女子よりも発現しやすく、2〜4倍にもなっています。原因はわかっていないものの、家族内で多く見られることがあることから、遺伝的因子が関与していると考えられています。
チックは軽いものは5人に1人の小児にみられるものの、軽度のために医師でも見逃すことがあります。チックのある子どもには注意欠如・多動性障害のほか、強迫性障害、不安障害、うつ病、学習障害などがみられることがあります。これらとチックが同時にあると、ますますトゥレット障害が強く現れることにもなりかねません。
チックは運動チックと音声チックがあります。運動チックは目的のない同じような不随意運動(まばたきをする、顔をしかめる、急に頭を振るなど)が素早く不規則に繰り返されるもので、音声チックは意図しない音や言葉が突然繰り返されるものです。この両方がみられたときにトゥレット障害と診断されます。チックは突然、劇的に始まることがあり、1時間に何回も起こることがあれば、数か月ほとんど現れないことがあり、再び突然起こるというような発現があります。
チックは単純性チックと複雑性チックに分けられます。単純性チックは極めて短いチックで、神経質な癖として現れることがあります。複雑性チックは単純性チックが複数組み合わされたもので、長く続く特徴があります。複雑性チックの中には、卑猥な言葉や便に関連した言葉を叫ぶ汚言がみられることがあります。特徴的な行動だけに、トゥレット障害というと汚言を思い浮かべる人がいるかもしれませんが、トゥレット障害の約85%には汚言はみられていません。汚言を口にしたり、他の人の動きや言葉を繰り返すという複雑性チックは、わざとやっているように見えることもあるのですが、トゥレット障害の人は意図的にやっているわけではありません。
チックが起こる前には、その行動をしたくなる強い衝動が生じています。この衝動は、くしゃみをしたり、かゆいところを掻きたくなる無意識の行動に似ています。チックが起こる体の部分では緊張が高まり、チックを起こしたあとには一時的に落ち着くようになります。
チックは数秒から数分なら我慢ができても、意識的な努力が必要で、簡単なことではありません。我慢をしても衝動は抑えられるものではなく、精神的なストレスがあるときには特に抑えにくくなります。ストレスはチックを悪化させるので、無理に抑えるようなことはしてはいけないということです。