掛け布団は軽いほうが快適な睡眠を得られると一般には伝えられていますが、むしろ重い掛け布団のほうが熟睡できるという情報が広まっています。睡眠の質がよくなるだけでなくて、発達障害の改善にも役立つということも伝えられていて、「そんなことで改善するから」ということで発達障害者にも、その家族にも注目されています。
有効性について考察する前に、なぜ発達障害の改善に役立つと言われるようになったのかということから見ていくと、掛け布団の重さの有効性の研究を始めたのが自閉症のアメリカの動物学者で、感覚過敏の中でも触覚過敏であったことから、重い掛け布団の研究に取り組んだということです。重い掛け布団によって強い圧迫感を受けると身体的には苦しい感じがあっても、幸せホルモンのセロトニンが多く分泌されて、睡眠を促すホルモンのメラトニンが多く作られることになります。そのために、不安やストレスが原因となっている不眠症の改善につながるだけでなく、発達障害の自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動性障害にも改善効果が得られたということです。
睡眠障害があると自律神経の調整が乱れるという考えと、その逆に自律神経の調整が乱れるために睡眠障害が起こるという考えがあり、その両方が相互に影響しているという考えもあるのですが、どれが正解であったとしても自律神経の乱れは脳の機能に影響を与えるので、発達障害に関係していることは当然のように考えられることです。
セロトニンの分泌は掛け布団の重さによる圧迫の強さの影響を受けていて、アメリカの研究では重い掛け布団によってセロトニンの分泌量が28%も増加したという研究成果があります。重い掛け布団の圧迫はストレスを高めそうですが、ストレスホルモンのコルチゾールは31%も低下する結果となっていました。
睡眠の質がよくなるということは、自律神経で興奮作用がある交感神経の働きが抑えられて、抑制効果がある副交感神経の働きが盛んになっている状態です。圧迫を受けることによるリラックス効果ということではツボ療法が思い浮かべられるところですが、実際に、どの程度の重さが効果的なのか、どの程度の発達障害への好結果が得られるのかについて、今後の研究が待たれるところです。