新型コロナウイルスの感染拡大が、これ以上進まないようにと、緊急事態宣言の対象となった感染拡大地域(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県)への移動自粛を呼びかけるだけでなく、自分に感染することを恐れて、感染者がいない地域に疎開をする人がいます。これを書き始めたいときには岩手県、鳥取県、島根県の3県でしたが、書いているうちに島根県と鳥取県での感染が確認されました。感染しないために行きたい気持ちはわからないではないものの、地元地域としては来てほしくないというのが本音でしょう。
子どもや孫を安全な地元に迎え入れたいという家族の気持ちは理解できるところです。また、できれば近しい人のところに行きたいという気持ちもあって、どうしても自分の家族だけは迎え入れたいということになるのでしょうが、まったく感染者が確認されていない地域では、リスクが高い地域の人は受け入れたくないというのは当然すぎる感情です。感染拡大地域からの入国を制限して、国内の感染を防ごうとした国の方針と、同じことを国内にも望む人が多いということです。
流動人口が増えれば、それは感染症のリスクが高まるということになります。人口だけでみると一番少ないのは鳥取県の約55万人、次に少ないのは島根県の約67万人です。東京都で感染者が一番多いのは世田谷区ですが、世田谷区は91万人以上の人口を抱えています。これに次ぐのは練馬区(約74万人)、大田区(約73万人)、江戸川区(約70万人)、足立区(約69万人)、杉並区(約57万人)、板橋区(約57万人)と、島根県は足立区より少なく、鳥取県は板橋区より少なくなっています。
岩手県は人口密度が2番目に低くて、最も低いのは誰もが想像がつく北海道です。北海道は広いといっても人口密度が極めて高い札幌市があります。人口が少ないか、大都市部がない人口密度が低い地域が安全という一般的な感覚は、とりあえずは当たっていますが、ここに感染リスクが高い地域から移動したら、感染リスクが高まってしまうのは当然のことです。
感染者がいても、まだまだ少ない地域では、海外や大都市圏で感染してきたということが確認されています。それならば大都市圏に行かなければ安全ということで移動自粛となっているわけですが、そこに大都市圏から移動してくるとなると、移動自粛の意味がなくなりかねないのです。