文部科学省の「初めての通級による指導を担当する教師のためのガイド」には発達障害に関する部分があり、自閉症のある子どもの指導に当たって、自閉症の子どもの障害の状態について示しています。前回に続いて、行動に見られる特徴を紹介します。
③行動に見られる特徴
(1)対人関係
視線が合わない、名前を呼んでも振り向かない、人を意識して行動することや人に働きかけることが見られないほど、人への関わりや人からの働きかけに対する反応の乏しさが幼児期に見られます。障害の程度にもよりますが、周囲の適切な関わり合いによって対人関係は少しずつ芽生えてくるものの、未熟さが残ることが多くなっています。
(2)感覚刺激への特異な反応
ある種の刺激に特異的に興味を示す反面、別の刺激には極端な恐怖を示すことがあります。このような反応を引き起こす刺激の性質には、一貫した特徴は認められないものの、例えば低周波律動音(空調機器、エレベータ)、きらきらと光るもの(銀紙、セロファン)などが好まれる対象となる場合があります。また、種々の感覚を同時に処理することが不得手であり、例えば姿勢を制御することに意識が集中して、その他の働きかけには注意を向けられないことも指摘されています。
(3)食生活の偏り
極端な偏食があり、ほんの数種類の食物以外は他一切食べないという状態が何年も続くことがあります。偏食については、低年齢段階によく見られますが、成長とともに改善されることが多くなっています。
(4)自傷など
混乱、欲求不満、脅威などに対して、自傷などの行動をとることがあります。自傷については、例えば頭や顔を自分で殴打する、壁に打ちつける、指を噛むなどの行動ですが、それが激しい場合は負傷することもあるので、軽視することはできません。そのような行動の理由は推察できない場合もありますが、周囲の対応が行動を強化している場合もあるので注意する必要があります。
(5)多動
幼児期には、自閉症の子どもの多くに多動とみなされる行動が見られます。それは、その行動の予測がつかない、規則などの対応がしにくい、危険を回避する機能が充分に働いていないという側面が多いからです。また、特に集団行動においては、そうした行動が目立ち、そのために周囲に目が離せない、手が離せないという状態を強いることが多くなることから、一層、多動という印象を強めることになります。