新型コロナウイルスに感染したときに特に注意しなければならないのは抗がん治療を受けている人だということが、女優さんの死亡をきっかけにして広く知られることになりました。
がん治療は手術、放射線、抗がん剤の3種類に大きく分けられますが、このうち免疫に大きな影響を与えるのは抗がん剤による治療です。抗がん剤は骨髄の機能を低下させることから白血球の好中球の数が減少します。抗がん性を使用すると、7〜10日で白血球の数が減り始めて、10〜14日で最低数になり、3週間ほどで回復してきます。この期間に新型コロナウイルスに感染すると、免疫が大きく低下していることから重症化してしまうことになるということです。
好中球が減少すると肺以外にも、口、腸、尿路、肛門などに感染症が起こりやすくなることから、抗がん剤を使用するときの注意点として、ウイルス感染症に加えて、これらの部位の日和見菌感染にも注意するように伝えられています。こういったことの対策として、抗生物質や好中球の数を増やす薬剤が処方されます。しかし、この方法も新型コロナウイルスにはあまり効果はありません。
抗がん剤を使用したときに見られる症状として、38度以上の発熱、悪寒・寒気、発汗、咳、喉の痛み、口内炎、腹痛、軟便・下痢、肛門痛、排尿時の痛み、皮膚の発疹・発赤、傷口の腫れなどがあげられています。
新型コロナウイルスと戦う免疫細胞というと抗体を作り出すリンパ球のB細胞が注目されています。なぜ、好中球が減ると免疫が低下するのかというと、免疫がチームで戦っていることに関係しています。初めに弱いものの数が多い好中球が戦い、これで勝てない外敵には大きな白血球であるマクロファージが出撃します。マクロファージは外敵を大量に取り込んで処理していきますが、その後に、どんな敵を、どれだけ攻撃したのかを伝えるサイン物質のサイトカインを放出します。それを受けて、B細胞が外敵に適した抗体を作り出して対抗します。この一連の流れの初めのところが好中球の減少によって停滞すると抗体での攻撃が遅れてしまうようになるということです。