注意欠如・多動性障害の教育的ニーズ

文部科学省の「初めての通級による指導を担当する教師のためのガイド」には発達障害に関する部分があり、注意欠如・多動性障害のある子どもの指導に当たって、教育的にニーズについて示しています。
①早期からの教育的対応の重要性
注意欠如・多動性障害のある子どもについては、幼少期より気が散りやすく、じっとしていることができない傾向があり、忘れ物や紛失物が多いとしています。そのため、周囲の大人から行動を強く規制されたり、叱責を受けたりする場面が増える可能性が高くなっています。
危険な行為は制止する必要があるものの、こういったことの繰り返しによって、自己肯定感が低下し、「自分はどうせ、何をやっても叱られる」「やりたいことは大人に禁止されてばかりだ」といった無力感に陥ってしまう危険性が高くなっています。
注意欠如・多動性障害のある子どもの気になる行動は、この障害の特性によるものだということにできるだけ早期に気づき、本人の自己肯定感が低下することのないような対応をすることが重要です。そのためには、叱責するよりも望ましい行動を具体的に示したり、行動のよい面を積極的に探して褒めたりすることが効果的となります。
②障害の理解に関する保護者等への支援の重要性
注意欠如・多動性障害のある子どもに対しては、通常の学級において、必要に応じて適切な配慮をしつつ指導することが基本となります。しかし、子どもによっては、通級による指導を行うことが効果的であることから、就学に関する相談を進める上では、必要に応じて専門家の見解を伝えながら、保護者に対して通級による指導の意義・目的や通常の学級での学習との関係などについて充分な説明を行い、その必要性について理解を得るように努めることが重要です。
保護者の中には、子どもに障害があることに気づいていない場合や、気づいていても受け入れられない場合があります。そのような場合は、いきなり障害名を告げるのではなく、子どもの困難について、具体的な支援の方法を伝えるなどを通して、保護者が障害を受け入れられるように説明していくことが大切になります。
また、通級による指導における指導内容・方法、指導計画を保護者に提示することや、保護者がいわゆる通級指導教室を訪問して参観したり、担当者から説明を受けたりすることなどにより、保護者の理解と協力を得るように努めることが大切です。