熱中症というと、気温の上昇に伴って注意喚起されることから、その日の気温にばかり注意が行ってしまいがちです。しかし、気温が低めであっても湿度が高いと、気温が高くなったのと同じように熱中症のリスクが高まることがあります。湿度が高いと汗をかきにくくなり、発汗による放熱が起こりにくくなるので、熱がこもりやすくなってしまうのです。室内に温度計はあっても、湿度計がある家はほとんどありません(最近はデジタル時計に温度表示をされるものもある)。
日常生活における熱中症予防指針によると、温度指標によって危険(31℃以上)、厳重警戒(28以上〜31℃未満)、警戒(25以上〜28℃未満)、注意(25℃未満)の4段階の温度基準域に分けられています。それぞれの注意事項として、危険は高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きく、外出はなるべく避け、涼しい部屋に移動することがすすめられます。厳重警戒は外出時には炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意することがすすめられます。警戒は運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れることがすすめられます。そして、注意は一般には危険は少ないもの、激しい運動や重労働時には発生する危険性があります。
熱中症は気温だけで危険性が判断されるものではなくて、湿度も関係しています。湿度が高いと、気温が低めであっても危険状態になることがあります。
気温が30℃の場合には、湿度が85%で危険域になり、65%で厳重警戒域になります。気温が32℃では湿度が70%で危険域、50%で厳重警戒域になります。また、気温が34℃では湿度が76%で危険域、40%で厳重警戒域になります。湿度のほうから危険度を見てみると、湿度が50%では気温が36℃で危険域、32℃で厳重警戒域となり、湿度が60%では気温が34℃で危険域、31℃で厳重警戒域となります。湿度が70%となったら気温が32℃で危険域、29℃で厳重警戒域となってしまうので、湿度が高いときには、いきなり外を歩いてはいけない状況になります。
高齢者の場合には、危険域であってもウォーキングも危ないことになり、湿度が50%では気温が29℃、60%では27℃、70%では26℃、80%では24℃で危険域に入ってしまいます。こうなると温暖化が進んでいる現状では5月から9月までは高齢者はウォーキングをしてはいけない、もしも歩くとしたら相当の注意が必要ということになります。高齢者でなくても、生活習慣病がある人は熱中症のリスクが高まりやすいので、高齢者と同様に対策が必要です。では、高齢者で生活習慣病がある人はどうなのかというと、これに対する調査はされていないので、もっと気温と湿度の関係には厳しく対応するしかないということです。