発達障害児に「ご褒美作戦」は通用するのか

発達障害児は脳の発達のズレがあるために、普通の子どもなら当たり前に通じるような“手段”が通じにくく、これが育てる親を悩ませることになっています。特に大変なのは、自閉症スペクトラム障害の感覚過敏で、単なる好き嫌いと違って、体質的に本能的に受けつけないところがあり、それを無理に押し付けると酷い拒否反応を示すことがあります。
子どもに好き嫌いを言わせない手段として、よく繰り出されるのが「ご褒美作戦」です。嫌いなピーマンやニンジンを食べたら、お菓子をあげるといったことですが、生理的に受けつけず、それを口に入れることが苦しいだけという状態の子どもに、何を代わりに示しても反応が変わることはありません。ご褒美を考える前に、食べ物であれば食べられる工夫をすべきです。
目で見てピーマンやニンジンであることがわからないように細かく切って混ぜる、色も味もわからないようにカレーやシチューに入れるということはよくやられることですが、そんな姑息な手段は、すぐに見抜かれます。というのは、感覚過敏の味覚障害は嫌いなものには特に強く反応を示すからで、強く刺激されるほど不快感は強まっていきます。
ピーマンが食べられないのが苦味のせいであるなら、苦味が出にくい切り方をします。ピーマンの繊維は縦に通っていて、横に切ると苦味成分が出てしまいますが、縦に切ると出にくくなります。ニンジンは生だけでなく、煮ても食べられないということがありますが、これをスティック状にして素揚げにするとニンジン臭さを消すことができます。
このように工夫をしても、どうしても食べられないということなら、他の食材から栄養素を摂ることを考えるべきです。どうしても食べられないものを無理に食べさせると、それは精神的な苦痛を増幅させることになって、「母親が作った料理だけが食べられない」という不幸な状態につながりかねないのです。