ストレスがかかった状態は自律神経の調整を乱します。自律神経は興奮系の交感神経と抑制系の副交感神経があり、自動車にたとえると交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキに相当します。ストレスがかかると、その状態から逃れようとするために自律神経の働きが盛んになります。そのために筋肉や内臓の動きが高まり、脂肪の燃焼が進み、心拍数と呼吸数が増えて、血圧も上昇します。交感神経の働きが抑制になってしまう例外もあり、それは胃腸の働きと免疫です。胃では消化液の分泌量が減り、腸の蠕動運動は弱まり、腸からの吸収量も低下します。興奮状態にあると空腹を感じにくくなり、栄養吸収が悪くなり、便通も悪くなってしまうということです。
免疫のほうは自律神経が働くのは必要であっても、働きすぎると身体がリラックスすることがなくなり、免疫が低下します。免疫の向上のためには、交感神経も働きつつ、副交感神経の働きが盛んになったほうがよいのです。通常は日中には交感神経が中心で、夕方以降は副交感神経が中心になるようにバランスが取られています。このバランスが年齢を重ねると変化するようになります。
高齢になると興奮しにくくなり、落ち着いた状態になるというイメージがあって、副交感神経のほうが働いているように思われがちです。ところが、高齢者の交感神経の働きは若いときと変化がないのに、副交感神経のほうは高まりにくくなっています。そのために交感神経の働きが盛んになりすぎて、興奮状態になったときにもブレーキがかかりにくくなってしまいます。そして、免疫の面では副交感神経が働きにくく、外敵と戦う免疫力が低下するようになるのです。
自律神経は本人の意思とは無関係に自律して働く神経で、副交感神経の働きを盛んにしようと思っても、そう簡単には調整できないものとされています。興奮したときには深呼吸をするとよいということで、深呼吸で副交感神経の働きが大きく高まることはありません。
ただ一つ調整可能なのは温度の活用で、入浴では38℃で副交感神経の働きがよくなります。夏場にはよくても秋からは寒さを感じて、これが身体的なストレスとなって、リラックスできないという状態にもなりかねません。40℃までは、まだ副交感神経のほうが優勢なので、この温度までにしておきます。室温では20〜22℃が副交感神経の働きがよくなります。つまり、寒くも暑くもない温度です。