発達障害の特徴について、「発達障害者支援ハンドブック2020」で解説とともに問題点が指摘されています。発達障害と関連性がある社会現象の中から虐待について紹介します。
子どもの発達障害と虐待は関係がないように思われがちですが、共通していることがあります。まず初めに指摘されるのは、発達障害児は虐待の対象になりやすいことです。発達障害児は幼児期から療育に非常に手がかかり、療育をする人たちの気持ちを苛立たせることがあります。
また、なかなか大人との関わりが持てないために、療育をする人の無力感や徒労感をいたずらに刺激する子どもも少なくありません。このような発達障害児の特有の行動は、療育困難や虐待が発生するリスクを高めます。
これとは逆に、虐待を受けた子どもたちは発達障害のリスクが高くなることが知られています。発達障害の原因は先天的なものであることから、自分の持つ特性である発達の偏りが生きにくさにつながらなければ障害とする必要はありません。どんな小さな特性であっても、育ちの環境があまりに悪くても、それに対応できないと、発達障害としての問題が発生することになります。
近年は、虐待の被害によって脳の特定の部位に萎縮が起こり、これは後のケアによって回復しにくいという調査結果が発表されています。つまり、極限のストレスにさらされた子どもは、脳そのものにダメージを被っていることも考えられます。
また、関連した現象として、虐待の被害にあった子どもが、後遺症として関わりにくさや聞き分けのなさといった発達障害とよく似たパターンの行動障害がみられる場合もあります。そうなると、虐待の被害が、虐待が反復される危険因子を生み出すことになり、虐待する親との関係が悪循環に陥る要因となるだけでなく、場面を変えても暴力の被害にある要因となります。
発達障害のある養育者や虐待被害の後遺症がある養育者は、子育てに周囲からの適切な援助がないと、立ち往生して虐待に近い状態になることがあります。子どもに対してイライラしやすく、自分を否定されたような感覚を持ちやすいというのが、共通する特徴です。養育者に虐待被害がある場合には、虐待が世代を超えて反復する要因となるということです。