発達障害の自閉症スペクトラム障害にみられる感覚過敏は、触覚、視覚、味覚、嗅覚、聴覚の五感が過敏に反応します。この五感の中でも触覚過敏は身体に触れても普通なら平気と思われるようなことでも強い刺激、不快な刺激となって、特定の衣服が着られないということが起こります。子どもは着けなれないマスクは苦手なものですが、それでも年齢を重ねていくと、なんとか着けられるようになっていくものです。ところが、感覚過敏の発達障害児はマスクが苦手という状態では済まずに、マスクを着けること自体が苦しいことで、マスクを強要されると落ち着かなくなり、生活にも支障が出てきてしまいます。
ところが、今は新型コロナウイルスの感染拡大のためにマスク着用が義務のようになっていて、マスクを着用していないと人が集まるところだけでなく、道を歩いていても変な視線を浴びせられる、場合によっては苦情の言葉を投げかけられるという状況になっています。
発達障害は、ただでも社会に溶け込みにくくて、疎外感を強く感じてしまい、周囲の反応には過敏になっています。感覚過敏のために、余計に過敏になってしまうということが起こるのです。マスクを多くの人が着けるようになってから、さまざまな素材、さまざまな形状のマスクが登場しています。それでも感覚過敏の人にフィットするマスクは少なく、素材も形状も大人を想定しているので、子どもの触覚過敏でも大丈夫というマスクを探すのは大変なことです。
そこで感覚過敏の触覚過敏であることを周囲が認識している場合には、ハンカチで口と鼻を覆うことでもクリアできるものの、そのことを知らない人にはマスクを着けていないことだけでも顰蹙を買ってしまいます。感覚過敏であることを表示したマスク代わりの扇子も登場して、扇子を広げて周囲にアピールするということで、なんとかしている人もいます。これが、もっと広まってくれれば、触覚過敏の発達障害児の苦しさが少しでも軽減されると思うのですが、いかがでしょうか。