なぜ糖尿病患者は免疫が低下するのか

新型コロナウイルスの感染拡大の中で、糖尿病患者は感染しやすく、感染したときには重症化しやすいことが広く知られるようになりました。だから、糖尿病患者は注意をしてほしいということが強調されましたが、なぜ糖尿病患者が危険なのかという理由については、あまり語られていません。
糖尿病患者の免疫が低いことは以前から言われてきました。糖尿病患者の平均寿命が10年以上も短いことが明らかにされています。糖尿病は血液中のブドウ糖が多くなりすぎることで血管の細胞の新陳代謝が遅れ、そのために血管の老化が進み、これが寿命を短くする一つの理由になっています。血流が低下することで、免疫細胞の白血球とリンパ球が駆けつけるのが遅くなり、これが感染症を早く進める要因になっていると考えられています。
糖尿病は血液中のブドウ糖が多くなりすぎる、つまり血糖値が高まることから栄養過多と思われがちです。しかし、細胞レベルで見てみると、細胞の中に充分なブドウ糖が取り込まれないために血液中のブドウ糖が増えていることであり、細胞は飢餓状態になっています。そのために細胞が正常な働きをすることができなくなっています。
全身の細胞は一般に約60兆個とされていますが、免疫細胞も全身の細胞に含まれています。血糖値が高まりすぎるということは免疫細胞にもブドウ糖が充分に取り込まれずに、免疫細胞の働きが低下してしまいます。これでは外敵が侵入してきたときに本来の力を発揮して戦うことができなくなります。
糖尿病の治療は食事療法が基本となりますが、そのためにブドウ糖が含まれる糖質を減らすことが求められ、ご飯の量を減らすことが一般には行われます。もちろん、食べ過ぎの人は減らすことは必要ではあるものの、あまりに減らし過ぎると飢餓状態の細胞は、ますます疲弊してしまいます。免疫が大きく低下している糖尿病患者は、ブドウ糖不足も考えられるので、一定の糖質は摂って、血糖値が高まりすぎるときには運動をして血糖値のコントロールをするべきだということです。