活性酸素は身体の産業廃棄物

活性酸素の存在が多くの人に知られるようになったときには、「酸素は生きていくために必要なもので、それが活性化しているのだから健康に役立つもの」と健康には良いものだと言われることもありました。しかし、活性酸素についての報道が増え、テレビや新聞、雑誌などのメディアで取り上げられることが多くなると、活性酸素は健康に悪影響を与える存在であることが理解されるようになっていきました。
ところが、そのときの理解は「活性酸素は身体のサビ」「細胞を酸化させるもの」という程度であり、活性酸素の実態については充分には理解されず、そのこともあって対処法として紹介されることについても正しい理解がされていなかったのも事実です。「活性酸素は身体を動かすことで多く発生するので、あまり体を動かさないほうがいい」、「活性酸素を消去する作用があるものを多く摂れば活性酸素は発生しなくなる」という誤った情報がメディアで紹介されることもありました。
これは酸素と活性酸素の違いがよく理解されていなかったことも関係しています。活性酸素は、酸素と基本的には同じ構造をしていますが、一つだけ異なっているところがあります。それは電子の数が1個だけ違うことです。通常の酸素はプラスの電子が4個、マイナスの電子が4個の対になっています。それに対して、活性酸素はプラスの電子は4個あるものの、マイナスの電子が3個と、1個欠けています。しかし、このマイナス電子の1個だけの欠けが全身の健康や美容に大きな影響を与えることになります。
活性酸素を理解するためには、まずは、そのもとになる酸素について知っておく必要があります。
酸素は、空気の主な成分であり、空気には酸素が約21%含まれ、そのほかの成分として窒素が約78%、そして約1%がアルゴン、二酸化炭素、ネオン、一酸化炭素、ヘリウムの割合となっています。呼吸によって空気として吸い込まれたのちに、酸素は肺に取り込まれ、酸素は肺を構成する肺胞の中で血液中の赤血球と結びつきます。酸素が結びつくのは赤血球の赤い色素(血色素)のヘモグロビンで、ヘモグロビンには酸素と結合しやすいミネラルの鉄が含まれています。
ヘモグロビンと結びついた酸素は、赤血球によって全身の血管へと運ばれていきます。酸素は血管を通過して細胞に取り込まれ、細胞から排出された二酸化炭素は血管を通過して血液中に入り、赤血球と結びついて肺胞まで運ばれます。肺胞から二酸化炭素は気管に送られ、呼気によって身体の外に排泄されるという流れになっています。