新型コロナウイルス感染症と脂質異常症の深い関係

新型コロナウイルスは高齢者、基礎疾患のある人は感染しやすく、また重症化しやすいことが確認されています。基礎疾患は糖尿病、高血圧、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)、心疾患、脳血管疾患、肥満のほか肺疾患、腎臓疾患なども含められています。重症化しやすい人は、血栓ができやすく、血栓が詰まることによって免疫が低下することが確認されています。血栓予防こそが重症化防止の決め手だと考える専門家も少なくありません。
血栓が血液中で作られるのは、血管が傷ついたときに発生する血小板がはがれて、これに血液中で多くなった中性脂肪やLDLコレステロールが付着して大きくなり、これが血栓となります。ただ中性脂肪やLDLコレステロールが多くなるだけでなくて、活性酸素によって酸化することも原因となります。
厚生労働省の患者調査によると、脂質異常症で治療を受けている患者数は220万5000人と推測されています。性別では男性が63万9000人、女性が156万5000人と、女性は男性の2.4倍にもなっています。厚生労働省の国民生活基礎調査の結果をみると、通院している人の疾病は男性では高血圧症、糖尿病、歯の病気の順で、女性では高血圧症、脂質異常症、眼の病気の順となっています。
女性に脂質異常症が多い原因としてホルモン分泌があげられています。女性は50歳以前では悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールの値は低くなっていますが、50歳以降は急に男性よりも高くなります。中性脂肪も50歳代までは男性のほうが高くなっているのに対して、女性では30歳代で上昇するようになり、60歳代では男女差がなくなります。女性は善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールの値は女性のほうが高くなっていて、LDLコレステロールの悪影響を抑えていますが、50歳代以降では女性はHDLコレステロール値が低下します。このことによって女性は年齢を重ねるとLDLコレステロール値が高まり、脂質異常症の患者が増えていきます。
女性ホルモンのエストロゲンは動脈硬化に対して保護的に働いていることから動脈硬化は少ないのですが、閉経後にはエストロゲンが急激に減って、動脈硬化のリスクも高まります。新型コロナウイルスの感染リスクである脂質異常症は、すべての基礎疾患がある人に共通することではなくて、高齢の女性では特にリスクが高まることになるということです。