感染拡大のリバウンドは元に戻るだけなのか

新型コロナウイルスの感染者数が減少していく中で、一都三県に発令されていた緊急事態宣言が延長になったときに次の感染拡大を懸念する専門家から出されたのが「リバウンド」という言葉でした。せっかく減少傾向にあって、収束も見えてきたのに、緊急事態宣言を解除して外出自粛を緩めてしまうと、また感染者が増えて、元に戻ってしまうという意味で使われました。これを受けて、政府の発表でも国の代表者の発言でも“リバウンド”が盛んに使われました。
リバウンド(rebound)は使われる世界で意味合いが違っていて、バスケットボールではゴールミスで弾かれたボールのことで、アイスホッケーではゴールキーパーが弾いたパックを取ることを指しています。医薬の世界では投薬を中止したあとに急激に病状が悪化する意味で使われています。
最も多くリバウンドが使われているのはダイエットの世界で、やせる前の体重に戻ることを主に指しています。しかし、本当の意味は違っていて、前の体重に戻ることではありません。体重が元に戻っただけではなくて、体脂肪の割合が増えて、やせにくい体質になってしまうことを言います。体脂肪が増えても体重が同じということは他に減っているものがあるということで、その減っているものは筋肉です。
エネルギー代謝量は筋肉が最も多いので、食事を減らして運動をしないというダイエット法では筋肉減ってしまいます。体重が元に戻ったときには筋肉は増えずに、脂肪が増えているわけで、この結果として前よりも太りやすく、やせにくい状態になっているのが本来のリバウンドが意味することです。
減ったはずの新型コロナウイルスの感染者が増えることになるのは見た目のリバウンドで、再び外出自粛をしなければならない状態になると、運動不足、家庭に閉じこもることによる過食、通院の機会の減少、地域の健診率の低下といった健康寿命の延伸と逆のことになることを国民に強いることになります。
これが日本人の健康に大きく影響することになるだけに、数の問題だけでなく、将来の健康への影響にも、また今でも急増している医療費や介護費を増やすことになるという意味でも、感染拡大のリバウンドは防がなければならないということです。