健康寿命延伸のための提言15 提言のエビデンス1喫煙・受動喫煙1

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第1回)を紹介します。
喫煙は、さまざまな疾病との関連が、これまで指摘されています。喫煙とがんとの関連を検討した日本の5つのコホート研究(大規模比較調査)のメタ解析(複数の研究の結果を統合して高い見地から分析すること)では、がんのリスクが喫煙によって1.5倍に高まることが報告されています(男性1.6倍、女性1.3倍)。さらに日本人を対象とした複数のコホート研究を統合すると、非喫煙者に対する喫煙者のがん死亡のリスクは、男性で2倍、女性で1.6倍程度高くなると推計されています。
喫煙者の割合を踏まえて推計すると、この数字は日本人のがんの約20%が喫煙を原因とするものであり、喫煙していなければ予防可能であったことを意味します(男性では約30%、女性では約5%)。
また、喫煙は虚血性心疾患、脳卒中、心房細動といった循環器病のリスクを増加させると考えられています。喫煙本数とくも膜下出血、特に男性においては喫煙本数とラクナ梗塞、大血管脳梗塞、虚血性心疾患について量反応性が確認されています。女性は男性より喫煙率は低いものの、脳卒中リスクは男性よりも大きいとの報告があります。人口寄与危険割合でみると、男性ではたばこの循環器病発症リスクの影響は、メタボリックシンドロームの影響とほぼ同じでした。メタボリックシンドロームがある女性が喫煙した場合、メタボリックシンドロームがない非喫煙者と比べると循環器病発症リスクが5倍ほど高くなるとの報告があります。果物や食物繊維など健康によいものをいくらとっていても、喫煙することで循環器病リスクの低下に結びつかないとの報告もあります。